『夏目友人帳』『神はじ』に次ぐ、新たな“妖怪”ファンタジー! クーデレ狐×獣医師少女×あやかしお仕事の『九尾狐と獣の医師』

マンガ

公開日:2025/9/5

九尾狐と獣の医師
九尾狐と獣の医師(蓮水りく/白泉社)

 少女向け漫画誌「LaLa」で集中連載中の『九尾狐と獣の医師(くすし)』(蓮水りく/白泉社)が、9月5日に待望のコミックス第1巻を刊行。クーデレ狐と獣医師少女が紡ぐ、新たな“妖怪”ファンタジーが幕を開ける。

 著者の蓮水りくは、わずか1週間でデビューが決まる「ラララボ!1day ハイスピードマンガ賞」出身の漫画家。読切として発表された『九尾狐と獣の医師』が好評を受け、8月22日発売の「LaLa」10月号より短期集中連載がスタートした。

 物語の舞台は、人と妖怪が共に暮らす世界。ヒロインの瑠璃(るり)は妖怪大好きの獣医師で、祖父のように妖怪も手当てできるドクターになるべく旅をしていた。そんなある日、突然化け犬にさらわれた彼女は、その先で美しい九尾の狐・藤瑪(ふじのめ)と出会う。

advertisement

 瑠璃を連れ去った化け犬の淡墨(うすずみ)によれば、藤瑪は100年前に受けた傷の影響で弱っており、このままだと命に関わるという。「藤瑪を治してくれ!!」と懇願する淡墨だが、当の本人はあまり乗り気ではない様子。しかも藤瑪を蝕む傷は「ガシャドクロ」と呼ばれる妖怪の呪いで、その怨念を浴びすぎると瑠璃自身も危険に晒される。果たして彼女は、100年間も癒えなかった傷を治し、藤瑪を救うことができるのか――。

 この世界における妖怪は共存の関係にあるものの、人間にとっては恐ろしい存在である。両者が衝突することも珍しくはなく、瑠璃のように恐れず接する人物は非常に稀のようだ。実は50年前にも妖怪を恐れず、藤瑪を治そうと尽力した獣医師がいたが、彼はガシャドクロの怨念を浴びすぎて都に運ばれ、そのまま二度と帰らなかったという。

 藤瑪の獣医師嫌いは、そうした辛い過去が影響しており、手当てしようにもなかなか一筋縄ではいかない。そんな二人がぶつかり合いながらも、お互いに理解を深めていく様子こそ、同作の大きな見どころ。心を通わせていくうちに見せる、藤瑪の“デレ”な一面にも注目だ。

 なお出版社の白泉社といえば、鈴木ジュリエッタの『神様はじめました』や緑川ゆきの『夏目友人帳』など、数々の妖怪ファンタジーを世に送り出してきた実績を持つ。人間と妖怪の関係や心の交流を丁寧に描いている部分は『九尾狐と獣の医師』にも共通しており、こうした名作の系譜の中で、どのような存在感を示すのか注目される。

 妖怪ファンタジーを好む読者には、ぜひ手に取ってもらいたい作品だ。

あわせて読みたい