約900万円の入金に「これは本気だ」インスタのDMから依頼 ウズベキスタンで兵士に囲まれて寿司を握った相手とは/異端思考②
公開日:2025/9/9
そして翌朝、前後に護衛車がついた大統領専用と思われる車に乗り込み、荷物を積み込んだロシア軍の車輛のようなトラックとともに、ホテルのある市街地を外れどんどん山の方へと向かっていった。
一面、雪山みたいな山道を通って、湖のほとりにある城のような要塞のような建物に到着。
おそらく日本人であそこへ行ったのは照寿司が初めてであろう。
そこはGoogleマップにも載っていないようなところで、建物内に入るときはパスポートを預け、携帯も持ち込んでいいのはグループで1台だけ。写真も撮ってはいけない場所なのだ。
我々が宿泊していたのは、首都タシュケントの中心部にある5ツ星ホテルのハイアット リージェンシー タシュケントだったが、その城までは車で2時間か3時間ぐらいだったと記憶している。恐らくそこは大統領専用の迎賓館か何かなのではと思う。

ウズベキスタンの大統領は、選挙で選ばれ、その後、憲法を変えて実質的に終身大統領になった。国自体もうまくいっている。
ウズベキスタンは海がないので、冷凍のサーモンなどはあるが、生の魚はコイぐらいしか食べない。しかし大統領やロイヤルファミリー、大企業の社長や重役レベルになると海外にもよく行くので、寿司は知っているし、食べたこともある。
そこで照寿司の出番となったわけだ。
この時は20名分を2回握っただけだったが、なんとその翌年に照寿司はまたウズベキスタンに呼ばれることになる。
2回目に行ったときは、20名分を3回、合わせて60名分を握った。
1年後に空港に降り立ったときは、空港も改修され近代的になっており、発展に勢いがある国だということを痛感。
2回目に行ったときは、近隣で獲れたマグロで解体ショーも行った。1回目とは違って、様子も分かってきて、つまり照寿司は大統領への接待で呼ばれているのだ。
接待している側も、ここでは伏せるが、誰なのかも分かった。
1回目、2回目は例のウズベキスタン人の仲介人がいたが、2回目のときに、実際に接待をしている側の人間の名刺をもらい「今度から直接頼む」と。
だから1回目は、最後まで誰が呼んだのか謎だったのだ。狐につままれた気分で帰ったのも納得なわけだ。
1回目も2回目もカウンター形式ではなく、晩餐会のようなテーブルで食べる感じだった。1回目は正直、大統領含めゲストたちの反応がそんなになかったので、まさか2回目も呼ばれるとは思っていなかった。
日本の食材のウニなど、国家元首なので当然喜んで食べてくれていたが、そこまで照寿司を気に入ってくれているとは思わなかった。
2回目で依頼主が分かってからは直接依頼が来るようになり、その後にも、もう1回、ウズベキスタンに握りに行っている。
スケジュールで言えば、11月10日の夜に到着をして、2日目に大統領に寿司を握り、3日目にレストランで晩餐会をし、4日目に少し観光をして、夜に飛行機で帰ってきた。4日間あればウズベキスタンに行って握って帰ってこられるというわけだ。

正直、国内でG7やG20といった国際会議で料理を供した日本人はそこそこいるかもしれないが、その国まで行って国家元首に料理を作って目の前で出したという料理人は、そうはいない。
照寿司は、日本のトップレベルの寿司ブランドとして認められた。それが何よりもうれしかった。
現在、大小のイベントを合わせれば、大阪に年12回、東京に年12回、マカオに年4回、ウズベキスタンに年2回、台湾に年2回行くというスケジュールをこなしている。さらに、福岡の戸畑にはホームグラウンドとも言える自分の店もある。
この10年で、世界のエンターテイメントの業界が照寿司を知り、協業したいと言ってくれているのは本当にうれしいことだ。
そして、これら一つ一つの始まりは、すべてInstagramだ。
一回では終わらず次に繫げられたのは、何より「自分の価値は自分で決める」と、自分を信じて自分のスタイルをやり通したことにある。それが世界に認められたわけだ。
寿司業界で「異端」と言われて白い目で見られながらも、今や「言い値でいい」とまで言ってもらえる照寿司ブランドをどうやって作りあげたのか、本書で明かしていこうと思う。
<第3回に続く>