世界中を飛び回る寿司職人が語る成功するための秘訣は、とにかく真似(パク)ること!/異端思考④

ビジネス

更新日:2025/9/11

異端思考 私が世界一有名な寿司職人になった理由』(渡邉貴義/ポプラ社)第4回【全4回】

 北九州にある「照寿司」の三代目・渡邉貴義氏は、エンターテインメント性を加えた独自のスタイルの寿司を展開。SNSも駆使して人気を爆発させ、今や世界中の食通を唸らせているほどに。さらに赤坂、西麻布、大阪、リヤドのほか、世界各国での出店も予定しているとか。「寿司オペラ」「寿司アドベンチャー」と称した寿司には業界内外から批判や中傷が少なくないものの、一切耳を貸すことなく「自分ブランディング」としてのスタイルを貫いている。そんな渡邉氏の思考をまとめた書籍『異端思考 私が世界一有名な寿司職人になった理由』より、一部を抜粋してお届けします!

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『異端思考 私が世界一有名な寿司職人になった理由』
『異端思考 私が世界一有名な寿司職人になった理由』(渡邉貴義/ポプラ社)

成功を見据えてとにかく「真似(パク)」る

 今や世界はSNSで繫がっています。例えば、自分はInstagramを活用したように、無料で世界と繫がれる世界があるわけです。
 10分でも20分でもザッピングをして、自分がやっているカテゴリーに近いのを見て、まずは自分がやれる範囲で真似てみる。

 自分も、100%何か真似た、というものはありませんが、Instagramからインスピレーションはたくさんもらいました。
 正直、ネットの世界は「パクった」「パクっていない」などと、言い始めるとキリがないものです。とにかく自分のアカウントで注目してもらうためには、まずは、「ただただ自分が楽しい」と思えるものを真似することが、重要だと思います。

 自分自身、インフルエンサーでもなんでもないですが、自分のInstagramは、ただ自分が楽しく思えることをやっているだけ。それだけでフォロワー人数も増えていくし、人数が増えると自分の承認欲求も満たされていきます。

 弟子たちにも、いつもこう言っています。
「自分は35歳のときから15年ぐらいかけて今の位置までたどり着いたけれど、もし、照寿司が一つの目標であるなら、君たちは照寿司というロールモデルがすでにある分、たどり着くまでに5年は短縮できる」と。
 もう答えは出ているので、とりあえず自分の真似をすればいいのです。
 結局全て、もちろん寿司自体も真似なわけです。代々親方や先輩が教えてきてくれたものの真似を、自分自身に落とし込んで、自分なりの解釈で出しているだけなのです。

 歌舞伎にしろ何にしろ、伝統というのは、まずは真似るところから始めるしかないですよね。
 ただ、一生、コピー&ペーストでいいのかというと、照寿司がやっているのは、「自分に落とし込んで、自分なりの解釈で出す」というチャレンジです。それが、新たな伝統を生み出し、世界に認められたのです。
 そこが異端と言われるゆえんかもしれません。
 歌舞伎の世界でも、伝統をベースにそのうえに新たなものを打ち立てたからスーパー歌舞伎が生まれたように、寿司の世界では照寿司がエンタメ寿司というジャンルを確立したわけです。

 最初は「ピエロみたい」とか「何あれ?」「伝統に反する」などと苦言を呈されたこともあります。今でも自分のことを快く思っていない料理業界の方も多いです。

 でもチャレンジからしか伝統は生まれません。

 鉄板焼きの『ベニハナ』が、1960年代にエンターテイメント性のある鉄板焼きというジャンルを確立して以降、エンターテイメント性のある和食というのは、ずっと生まれてきませんでした。
 しかし自分が照寿司をやり続けることによって、現代で初めて、エンターテイメント性のある寿司が一つの道になりつつあるのです。

 ですから、照寿司は道なき道を切り拓いて、寿司業界で一つの流れを作ったと言ってもいいと思っています。

 ただ、最近は、昔ほど情報収集をしなくなりました。エゴサーチもしません。照寿司は、もうそういうフェイズじゃないと思っています。
 昔は、Instagramでも自分がどう書かれているか気になって探したり、食べログの評価も全部読んでいました。でも、今は一切見ないです。

 SNSのアンチも、自分が大きくなるにつれて全然気にならないようになりました。たまにスタッフや友人から、「こんなこと書かれてましたよ」と言われたりしますが、「あ、そう」という感じで、何も感じないです。

 そういうアンチの反応に、もはや傷ついたりはしなくなったんですが、その一方で、それもまた良くないのではないかなと思ったりもします。以前のように自分の内側にふつふつと煮えたぎるものがなくなっちゃったんじゃないかと思ったりすることもあります。
 これまで、そういったアンチに対しての怒りでやっていた部分もありますから。人間って、わがままですよね(笑)。

 4年前は、Instagramのフォロワー数が11万7000人で、12万人にあと少しという話をしていましたが、今は72万人。TikTokやFacebookなどのアカウント、全てを入れたら総フォロワー数は120~130万人いますから、我流から今は本流へとなっていると言えるのではないでしょうか。

SNSの中での影響力

 自分のイメージって、どうしてもSNSにあがると薄まるような気がしています。本当の自分とはかけ離れてしまう感じです。
 現在自分があげているSNSはInstagramとTikTokです。とはいえ、SNSの中でイメージは薄まっても、自分のSNSをみなさんは見ていると、いつか食べたいっていう気持ちにはなってくれているのかなとは思います。

 SNSは諸刃の剣で、自分に好意的な人、ファンになってくれる人もいれば、もちろんアンチもいます。
 いろいろな人が見ているからこそ、SNSを通じて、議論を呼んだほうがいい部分があるとも思っています。

 例えば、自分の動画を見て、「もう絶対食べたくない」というコメントもいただきます。よくあるのが、「おじさんが生の手で握る寿司は無理」とか。こういう人たちは、回転寿司でロボットが握った寿司を食べていればいいと思うのですが、カウンターで職人が握る寿司を知らない人たちからすれば、おじさんの握った寿司は気持ち悪いのかもしれません(笑)。

 こういうコメントの方には、そもそも寿司を何だと思っているのだと言いたいですが、そういう意見も受け入れなければならない。
 そういう意味で、SNSは問題提起の場所でもあるなと日々感じています。
 実際、TikTok、Instagram、Facebookのようなユーザー層は、一皿100円の回転寿司に行くような人がほとんどで、照寿司に興味を持ってくれてさらに照寿司に価値を見出してくれるような層は、0.01%程度しかいないのではないでしょうか。

 しかし、その0.01%の層に発信し続けることが大切です。
 SNSは自分の発信のベースとして、自分の正しい姿を発信して、自分の価値を高めることに使うということを意識しています。
 なぜなら、自分のような世界に通用する寿司職人に対して、若い人たちに憧れを抱いてもらいたいからです。

 自分はあくまでも寿司職人であり、自分のことをインフルエンサーなどとは思っていませんが、立場としてそういう立ち位置に多少足を突っ込んでいるのは否めません。
 ですので、自分のことを自分では「モチベーショナルスピーカー」と言ったりしています。
 これは、特に海外の飲食に携わるお客様からが多いのですが、「あなたにいつもインスピレーションをもらっています」「あなたのようになりたいです」と、まるでインフルエンサーが視聴者に影響を与えたかのようなメッセージをいただくからです。

 彼らが日本の寿司というものを本当に知っているかどうかは分かりません。動画などを見て、どんなインスピレーションを受けるかは人それぞれです。
 しかし彼らが日本の寿司の動画を見た時、例えば銀座の寿司店の動画を見た時には、「俺たちにはこんな魚もない、技術もない、お店もない」と思ったとしても、照寿司のことを見たら「すごく楽しそうで、俺たちにもできそうじゃん」と思うかもしれない。
 それもインスピレーションの一つなのですから、それはそれでいいのではないかと思っています。

 しかも、SNSの中ではその照寿司のやり方の二番煎じ、三番煎じがどんどん出てきています。本物の照寿司からするとさらに照寿司が薄められたイメージですが、今やそれは日本中だけでなく世界中に広まっているわけです。
 見た目まで僕の真似をした人や、その真似の真似まで存在しているわけです。そういう意味で、どんどん照寿司が薄まりながら広がっていく……。
 よくも悪くも、もうこれは誰も止められない流れになっています。

<続きは本書でお楽しみください>

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