山里亮太 妬みキャラから結婚、MCへ…時代と自分の変化の中で覚える劣等感 山里亮太×宮嵜守史【対談】/ラジオはパーソナリティ〝次第〟②
公開日:2025/9/20
つねにブレーキに足を置いているという劣等感

宮嵜 僕は山ちゃんが〝ミスター・マスメディア〞だと思ってるの。アンテナの張り方というか、センサーの利き方がよくて、世の中の変化に合わせてちゃんと変容してる。だって、番組が始まった当初は今だと言いづらいようなことも言ってたじゃない?
山里 今だったら絶対に無理な話をしてましたもんね。僕にセンサーがあったんじゃなくて、ラジオのスタジオに来るたびに、アンテナみたいなものをぶっ刺してもらってたんです。番組の中でそういうやり取りをして、それこそ宮嵜さんや廣重(崇、プロデューサー)が笑っていたら、「今のラインならここまで言っていいんだ」と教えてもらいました。それを「これはいいものなんだ」と自分の引き出しに入れておいたんです。
宮嵜 そういう時代の変化とともに、自分の立ち位置や発言を見事に順応させている感じはする。『140』と違って、やっぱりラジオはブレーキがかかる?
山里 ブレーキはかかるし、言ったあとにムチャクチャどきどきする数は増えたかもしれないです。「これってダメだったんだっけ?」「この名前って出してよかったんだっけ?」って思う機会は増えました。でもその、つねにブレーキに足を置いている感じが、自分の中での劣等感なんです。やっぱり太田(光)さんも小木(博明)さんもブレーキに足を置いてないじゃないですか。
宮嵜 教習車みたいな感じだよね。横にいる教官の足元にはちゃんとブレーキペダルがある。
山里 横にいる田中(裕二)さんや矢作(兼)さんはブレーキを踏む準備ができてる。それはやっぱりいいなって思います。ぼくは1人なので。一番カッコいいのは、ブレーキに足を置かずにやって、どこか擦ったとしても、それをおもしろいと思ってくれる人たちと一緒に笑えればいいんですけど、それをやる勇気もない。自分の見え方も気にするようになりました。たとえば、タクシーに乗る話をするときも「タクシーに乗せてもらう」ってそれが当たり前じゃないような言い方をしてます。口ぶりから新幹線のグリーン車に乗ってる感じが出ないようにするとか。
宮嵜 それって最近気にするようになったの?
山里 いや、結婚してからぐらいですかね。
宮嵜 奥様は経済感覚がしっかりしてる印象があるし、それはそれでいい影響だと思うけどね。
山里 いい意味で細かくなりました。時代が悪くなったんじゃなくて、ただルールが変わったわけだから。そのルールに順応していかなきゃこの場所にいることはできないんだって思ってます。
宮嵜 たぶん自分のステージの上がり方も自覚しているんだと思う。『不毛な議論』を始めたころって、山ちゃんは世の中に対してもラジオに対してもチャレンジャーだったじゃない?
山里 そうですね。
宮嵜 だけど、今は山ちゃんが自覚している以上に、まわりは山ちゃんのことを勝者だって感じていると思うんだよね。
山里 朝の帯番組をやって、結婚して、子供がいて……ですもんね。
宮嵜 そう自覚している自分の位置と、実際に見られている位置の乖離って、結構難しい問題なんだろうね。
山里 いやあ、難しいですね。昔、マネージャーだった片山(勝三、現SLUSH-PILE.代表)さんに、戦い方としては〝B級のA代表で居続けろ〞ってよく言われました。〝地下格闘技界のエース〞でいたほうがいいって。でも今は地上に出ちゃったんで。まったくスタートしたときと違う。本当に難しいです。旅の話をするにしても、「これ、随分と金銭的に余裕のある旅だな」と思われるのは怖いし。
宮嵜 そんな風に考えてるんだ。