アルコ&ピース(平子祐希、酒井健太)×宮嵜守史【対談】リスナーを置いてけぼりにしてないか不安も…ふたりが持つ“発展させ力”/ラジオはパーソナリティ〝次第〟⑤
更新日:2025/10/7
アルコ&ピースが持つ「発展させ力」
宮嵜 TBSラジオで始められると聞いたとき、2人はどう思ったの?
平子 ニッポン放送では毎年演出半分ではあるんですが、「終わるかな? 続くかな?」みたいな雰囲気がちょっとあったんですよ。ネタ半分本気半分で、オンエア上でもオフでも「今年はどうなんだ?」があって。そのころ、「TBSラジオでは芸人がどっしりと長期間やらせてもらえる」という話を他の芸人によく聞かされたんですよ。僕はもともとそんなにラジオを聴いてるほうじゃなかったから、その感覚がわからなくて。でも、TBSラジオで始まるってなったら、「TBSだ!」っていう反響がとにかく大きかったんですよ。
宮嵜 今とは違って、当時の『オールナイトニッポン』の27時台は入れ替わりが激しかったからね。気持ちはどうだったの? オールナイトは楽しかったんでしょ?
平子 みんな楽しく聴いてくれてるし、僕らも楽しくやってるのに、なんでこの短いスパンでハラハラさせられるんだろうという気持ちが強かったです。「さあ、どうする? 終わるか? 続くか?」みたいな煽りって、もちろん楽しい演出として入ってたけど、リスナーの反響の中には、「俺らがせっかく見つけた居場所を、そんな形で奪わないでくれよ」という生の声も正直あったから。TBSに行っても、長くやらせてもらえるというのはあくまで感覚でしかないし、もちろん終わる番組もあるわけですし。でも、ラジオって「この曜日のこの時間はこの人のラジオを聴くんだ」というリスナーの思いがある。だから、今までついてきてくれたリスナーからの反響を受けて、「もしかしたら、長いことやれる場所ができるのかな」とちょっと思いました。
酒井 平子さんと違って、僕は前からラジオを聴いてたし、ニッポン放送でやって、今度はTBSでまたやれるってなかなかないじゃないですか。ニッポン放送ではナインティナインさんの後に僕らがやって、今度はTBSで爆笑問題さんの前にやれる。僕はどっちも聴いてたから、単純にリスナーとしてメチャクチャ嬉しかったですね。ただ、府野さんから最初に話を聞いたときは、「たぶんバラしになる」って思ってました。前例がないから、「そんなわけねえしな」みたいな。
平子 期間もそんなに経ってなかったから展開が速くないかなって思った。単発かなとも思ったし。
宮嵜 いきなりのレギュラーだから、『D.C.GARAGE』が始まる前に、『おぎやはぎのメガネびいき』に出てもらったんだよ。オールナイトが終わった3週間後にゲストに来てもらって、オールナイトのタイトルコールをしてもらったもんね。
平子 そうだ、そうだ。ビター・スウィート・サンバかけましたね。
宮嵜 あのときは、ほぼほぼ番組をやる方向だったとはいえ、正直、100%は決まってなかったかもしれない。当時は『JUNK』をはじめとするTBSラジオの深夜リスナーに〝アルコ&ピースがおもしろいと思ってもらえるか?〞がすごく重要な気がしたのね。アルピーのラジオファンは『オールナイトニッポン』でしっかりついてたから、あんまり心配はしてなかったけど、TBSだけを聴いてるリスナーがいるとしたら、そこにもちゃんと刺さってほしかった。同時にTBSラジオの局内にもアルピーがおもしろいことが伝われば安心できる。最後の一押しみたいなところはあったかもね。
平子 僕らが番組を始めるときは『メガネびいき』の他に『爆笑問題カーボーイ』にも出させてもらいましたよね。あれはよかったです。お兄さん方に顔見せして、挨拶できたんで。
酒井 なんとなくTBSラジオの雰囲気が知れました。みんな優しいですよね。自由にやってくださいという感じを出してくれたので。僕が番組が始まって感じたのは、やっぱり生放送は楽しかったなって。『オールナイトニッポン』とは違って『D.C.GARAGE』は基本録音じゃないですか。今でも正直、生のほうがいいなって思ってます。録音も慣れてきたので、それはそれでいいんですけど。
宮嵜 そうだよね。僕も生放送をやりたい(笑)。
平子 僕も生がいいですね。アルコ&ピースの形式上もそうだけど、生が似合ってる。僕がなんか言う。酒井がなんか言う。そこにリスナーからダイレクトで生の声が届いて、そこから変わっていくのが自分たちのラジオというか。僕らには別に確固とした芯がない。だからこそ生でやりたいですね。
宮嵜 生放送でも録音でも感じるんだけど、2人には〝発展させ力〞というか、〝たとえ力〞があるよね。最近だと地下の書斎の話題が出たときがそうだったんだけど、既視感のある描写を2人で言い合ったりするじゃない? 映画やドラマをもとにした〝あるある風景〞みたいなものをすぐに出せるのは何でなんだろうって。そこがアルコ&ピースのラジオの特徴だし、アルコ&ピースの武器であり、特技のような気がするんだよね。
平子 そういう風景じみたもの……たとえば、地下室とか、怪しい洋館とか、ゴリラがいる森林とか、そういうものが好きという共通点は僕と酒井と福田にあるかもしれません。3人で話し合っているわけじゃないんだけど、そういう場所の空気感はみんな好きで笑っちゃう。頭に思い描いたときに笑っちゃうのは共通認識としてありますね。
酒井 リスナーを置いてけぼりにしてないかなって不安になるときもありますけど。3人で盛り上がりすぎて。
宮嵜 場合によってはそういうこともあるかもしれないけど、アルピーのラジオはそこを凌駕してると思う。それでもなお支持してくれるリスナーがいるのは強みだよ。反面、プロデューサーとしては、そういう空気は醸しながらも、裾野を広げる思考も2人には付けていってほしいかな。
酒井 始まったころに宮嵜さんがよく言ってましたよね。「新しいリスナーを取り入れたほうがいい」って。
宮嵜 もったいないと思うんだよね。このおもしろさを広げることも大事だなって思う。言ったら中毒者の人数をもっと増やしてほしいなって。
平子 話せば話すほど、僕らは間口を狭めていきますからね。ここまでわかってたヤツをさらに絞って、ふるいにかけてる(笑)。
宮嵜 だけど、そのふるいにかけられて残ったリスナーは絶対に離れないのもたしかだよ。ラジオ番組は扉を閉めるタイミングがすごく大事なんだよね。その番組の独自のノリや独自の言語を使い始めるのは、新規のリスナーが入り込めない空気を生んじゃうけど、すでに中に入っているリスナーにとったら、メチャクチャ心地いいことだったりもする。だから、閉じる閉じないのタイミングはすごく重要なんだよ。
平子 僕らは閉じるところでグルーヴを感じちゃうから(笑)。
宮嵜 だから、それを半開きのまま続けるのか、1時間のうち40分閉めて、20分はちょっと開くのか。やり方はいくらでもあると思う。
<続きは本書でお楽しみください>
