備品は自腹、サービス残業当たり前… ベテランの運送会社トラックドライバーが赤裸々に! 運送業界のブラックぶりと理不尽すぎる客を語ったコミックエッセイ【書評】

マンガ

公開日:2025/9/23

 ネット通販の普及によって、今さまざまな問題が表面化している運送業界。『運送会社トラックドライバーの誰にも言えないトンデモ業務日誌』(葛󠄀西りいち/竹書房)は、この業界で働いている人に今すぐ感謝の気持ちを伝えたくなる作品だ。

 本作は「これは事実なのか?」と疑ってしまうくらい、運送会社での絶句してしまうエピソードが連発される。主人公は、著者である葛󠄀西りいちさんの夫・ド近眼さん。大手運送会社で10年以上トラックドライバーを務めるベテランである。そんなド近眼さんは本作の冒頭から「新人の90%が3年以内に辞表を出します」と語る。

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 顧客の荷物を雑に扱う同僚、複数の手当で誤魔化される残業代、制服や台車などの備品は自腹などなど……。退職する人が多い理由に納得してしまう話が盛りだくさんである。

 そんなブラック事情も見るに堪えないが、対顧客とのエピソードは私たちにとって他人事ではない。本作にはさまざまなクレーマーが登場するが、事前に対策を打っていても、荷物に落ちた雨粒で文句を言ったり、「臭くて汚い」と理不尽な暴言を言ってきたりと、想像以上に尖った顧客も少なくないと言う。いろんな人がいて大変だなあと思いながら、「昨日荷物を届けてくれた配達員さんに、私はどんな態度を取っていただろう」と思わず顧みてしまった。

 トラックドライバーはどんなに遠方からの荷物でも届けてくれる。顧客として不満を抱く場面も時にはあるだろうが、本書のクレーマーのエピソードを見ると、当たり前だが彼らもひとりの人間であることを再認識させられるし、運送会社の背景を知ることでありがたみが爆増するはずだ。

 本書に載っている酷いエピソードはかなりのレアケースであると信じたいが、これらひとつひとつに滲み出るドライバーさんたちの悲哀から、この仕事の大変さと、私たちの生活にとってどんなに重要な役割を担っているかを、あらためて考えてみてほしい。

文=ネゴト / mikasa

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