生田絵梨花さんが選んだ1冊は?「偉大な先輩が人生をかけて舞台に立っていることに、身が引き締まりました」
公開日:2025/10/11
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2025年10月号からの転載です。

「しのぶさんの主演舞台を観に行ったら、ロビーでこの本が、しのぶさんのサイン入りで売られていたんです。これは買うしかない!と」
そう嬉しそうに生田さんが紹介してくださったのが、大竹しのぶさんが日常を綴った本書『ヒビノカテ まあいいか4』だ。
「私がご一緒させていただいたミュージカルやドラマのお話もあって。現場では聞けないしのぶさんの内面を、初めて知ることができました」
大竹さんの舞台への思いには、強く心打たれた。
「私にとって舞台は、修行のようなものなんです。演じる人物の人生を生きるために、すさまじい精神力と体力を注ぎ込む。しのぶさんも、役を引きずって孤独感に支配されたり、体に異変を感じたり。偉大な先輩がここまで人生を懸けて舞台に立っているんだから、私ももっと頑張らなくては、と身が引き締まりました」
コロナ禍に、大竹さんがイギリスの演出家、フィリップ・ブリーンさんとリモートで舞台稽古をしたエピソードは、とくに印象に残った。
「私も同じ頃、舞台のお稽古をしていたんです。もどかしさを感じつつも目の前のやるべきことをやると決意した当時が、鮮明に蘇りました」
生田さんは今回、フィリップさんと大竹さんとともに、シェイクスピア劇『リア王』の舞台を作り上げる。大竹さんが初の成人男性役・リアを演じ、生田さんがその末娘・コーディリア役を務める。
「大竹さんとフィリップさんのタッグに参加できる。その尊さを日々実感しています。しのぶさんはとてもオープンで、いつも胸をお借りして学ばせていただいています。リアとコーディリアの関係は物語の中でも鍵になりますので、たくさんお話しさせていただきながら丁寧に仕上げていけたらと思っています」
数々のミュージカルの舞台を踏んできた生田さんだが、ストレートプレイは今回が初挑戦となる。
「ずっとストレートプレイをやってみたかったんです。『リア王』はいくつもの誤解が絡み合うストーリーで、その中に人間の心の本質が表れていると感じます。だから、コーディリア役に臨むことで、私自身も丸裸になるんだろうと予感しています。フィリップさんが作る世界、しのぶさんが演じるリアによって、これまでにない新しい『リア王』が生まれるはずです。皆さんに楽しんでいただけるよう、私も葛藤しながらコーディリアを演じきりたいです」
取材・文=松井美緒、写真=TOWA
ヘアメイク=富永智子、スタイリング=有本祐輔、衣装協力=ドレス21万5600円(VICTORIA BECKHAM/イーストランド)、イヤリング1万5400円、リング(ミックス)2万2000円、リング1万2100円(すべてTEN./TEN.)
いくた・えりか●1997年、ドイツ生まれ。乃木坂46での活動を経てミュージカルなどで幅広く活躍。2019年に第44回菊田一夫演劇賞演劇賞を受賞。近年の主な出演作に、舞台『レ・ミゼラブル』『GYPSY』、映画『Dr.コトー診療所』『コンフィデンスマンJP 英雄編』、ドラマ『明日はもっと、いい日になる』など。

『ヒビノカテ まあいいか4』
(大竹しのぶ/幻冬舎)1760円(税込)
朝日新聞の人気コラム書籍化第4弾。演出家フィリップとの6000マイルを隔てたリモート舞台稽古、亡くなった両親と夫への想い、東京オリンピック閉会式のこと……。「一日一日、一瞬一瞬の中にささやかな喜びを見つけられる人間でありたい」。そんな願いのこもった著者の微笑ましく、豊かな日常。

Bunkamura Production 2025/DISCOVER WORLD THEATRE vol.15『リア王』NINAGAWA MEMORIAL
作:ウィリアム・シェイクスピア
上演台本・演出:フィリップ・ブリーン
出演:大竹しのぶ、宮沢りえ、成田 凌、生田絵梨花、鈴鹿央士、横田栄司、安藤玉恵、勝村政信、山崎 一
東京公演:10月9日〜11月3日(THEATER MILANO-Za)
大阪公演:11月8日~16日(SkyシアターMBS)
●ブリテンの老王リアは、国を3人の娘に分割し与えることに。長女と次女は甘言で父を喜ばせるが、末娘コーディリアは実直な物言いしかできず、立腹したリアに勘当される。