「自分では悪いことをしている自覚がない」DV加害者から見た夫婦関係を描いた漫画、誕生のきっかけとは?【著者インタビュー】
公開日:2025/9/24

「自分は有能で、仕事も家庭もうまくやっている」そう思っている勝ち組の夫・翔。そんな夫とは裏腹に、夫の機嫌を絶えずうかがい、傷ついてきた妻・彩。自分がモラハラ被害者と気づいた彩は、娘を連れて家を出て行った。変わりたいけど変われない、もがき苦しむ夫。壊れた夫婦関係を修復しようと努力するが、妻が出した結論は――。そんな一組の夫婦を描いた漫画『99%離婚 モラハラ夫は変わるのか』。そして、翔の上司で毒親だった鳥羽とその娘・奈月、ふたりの会社のハラスメントについて描く漫画『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』。2作の原作者である中川瑛さんは自身も妻へのパワハラを行ってきた元DVパワハラ加害者だといいます。現在はGADHA(ガドハ)というDV加害者が集まるコミュニティやPaToCa(パトカ)という親子関係に関するコミュニティを運営している中川さんに、2作が生まれた経緯やコミュニティで得た知見についてお話を伺いました。
――中川さんはDV加害者が集まるGADHAというコミュニティを運営していらっしゃいますね。
中川瑛さん(以下、中川):はい。自分自身が変わりたいと願うDV・モラハラ加害者が集まる場所なんです。基本的には完全オンラインで匿名・顔出しもしなくていい場所でSlackやZoomを使って交流します。GADHAに関してX(旧Twitter)で投稿をしていた中で、「DVやモラハラについて漫画にできたらいいな」という趣旨のことを僕が発信したところ、漫画家の龍たまこ先生からご連絡をいただきました。そこから「一緒に作品作りができたらいいですね」と話が進んでいき、1作目の『99%離婚 モラハラ夫は変わるのか』を作っていくことになりました。
――『99%離婚 モラハラ夫は変わるのか』、『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』はともに実体験ではないそうですが、作品を発表する上で自身が元DV加害者だということを世間に公表していますよね。その点に抵抗はなかったのでしょうか?
中川:団体を立ち上げた時からいずれフルネームを公表することは決めていたんです。だから抵抗はありませんでした。ただ、僕が身の上を公表するということは、同時に妻のこれまでも世間に公表することになるわけで、妻の気持ちが自分自身よりも気がかりでした。でも妻はGADHAの活動自体にもすごく協力的で応援してくれています。「世の中にはDV加害者・被害者の方はたくさんいるので、どんどん活動していったらいい」と言ってくれているので活動できています。
――なるほど。先にGADHAの活動をされていたのですね。ではGADHAという団体を立ち上げた理由を教えてください。
中川:自分みたいな人ってたくさんいるだろうなと思ったからですね。自分では、悪いことをしている・暴力を振っている自覚はないけど、実際は人を支配しようとしていて、相手を傷つけている。でも自覚がないから相手がなぜ傷つくのかわかっていない。そういう当時の自分と似たような人と話してみようと思ったのがきっかけです。
取材・文=原智香