「俺は十分な金を稼いで家族を支えている」無自覚なDVを繰り返していた夫は、自身の加害性に気づけるのか?【著者インタビュー】

マンガ

公開日:2025/9/25

「自分は有能で、仕事も家庭もうまくやっている」そう思っている勝ち組の夫・翔。そんな夫とは裏腹に、夫の機嫌を絶えずうかがい、傷ついてきた妻・彩。自分がモラハラ被害者と気づいた彩は、娘を連れて家を出て行った。変わりたいけど変われない、もがき苦しむ夫。壊れた夫婦関係を修復しようと努力するが、妻が出した結論は――。そんな一組の夫婦を描いた漫画『99%離婚 モラハラ夫は変わるのか』。そして、翔の上司で毒親だった鳥羽とその娘・奈月、ふたりの会社のハラスメントについて描く漫画『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』。2作の原作者である中川瑛さんは自身も妻へのパワハラを行ってきた元DVパワハラ加害者だといいます。現在はGADHA(ガドハ)というDV加害者が集まるコミュニティやPaToCa(パトカ)という親子関係に関するコミュニティを運営している中川さんに、2作が生まれた経緯やコミュニティで得た知見についてお話を伺いました。

――翔は働きに出ていることにプライドを持っていて、妻のことを下に見るような態度を取り続けています。妻が家を出ていったことで、翔は自身の加害に気づくわけですが、中川さんの場合はどのようにしてご自身の加害に気づいたのでしょうか?

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中川瑛さん(以下、中川):ある時、妻が仕事を休職したんです。今振り返ると休職の原因にも僕が関係していたんですけど、当時は気づいていなくて。妻にはすごくクリエイティブな才能があるんですよ。なので、その当時の僕は「やりたくない辛い仕事より、この人が得意だったり、才能がある分野のことを仕事にしたほうがいいのではないか」と思ったんです。それで僕が勝手にSNSやWebサイトを作って、妻が作ったぬいぐるみの販売をしました。そしたら1ヶ月でフォロワーが5,000人になったり、一体一万円でぬいぐるみが売れたりしたんです。僕は「妻は本当に天才だ」と思ってさらにディレクションをしていったのですが、妻本人は全くやりたいと思っていない。でも僕はどんどんノルマを課していって、妻がやらないと「どうしてやらないの?」と、いわば教育虐待に近いことをやっていたわけです。

――その時はまだご自身に問題があると思っていなかったんですよね?

中川:そうです。それで家庭内はどんどん嫌な空気になっていったんですが、あるクリスマスの前に大きなもめ事があって、クリスマスのディナーをキャンセルしようという話になりました。その時に突然「あれ?」と思い至ったんです。妻のためにやっているつもりなのに、結果的には妻も泣いているし、僕も全然ハッピーじゃない。「自分は何をやってるんだろう」って雷が落ちた感覚があって、そこでようやく自分に問題があるかもと思いました。

――ご自身の問題に気づいたとしても、大人になってから自分を変えることは誰でも難しいことかと思います。それがなぜできたのでしょうか?

中川:これは僕の中でははっきりしているのですが、原因がわかった時、僕は嬉しかったんですよね。今まではどうして妻を傷つけているのかわからなかったんですけど、妻は傷ついている。その理由がわかったので、「これは変えられる」と思ったんです。当時はGADHAのような団体がなかったのもあって、関連する書籍をたくさん読んで解決の方法を探していきました。

取材・文=原智香

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