「昔の自分に似ている」DV当事者からもリアルと評される漫画。約1600人の経験談がリアリティを生み出す!【著者インタビュー】

マンガ

公開日:2025/9/26

「自分は有能で、仕事も家庭もうまくやっている」そう思っている勝ち組の夫・翔。そんな夫とは裏腹に、夫の機嫌を絶えずうかがい、傷ついてきた妻・彩。自分がモラハラ被害者と気づいた彩は、娘を連れて家を出て行った。変わりたいけど変われない、もがき苦しむ夫。壊れた夫婦関係を修復しようと努力するが、妻が出した結論は――。そんな一組の夫婦を描いた漫画『99%離婚 モラハラ夫は変わるのか』。そして、翔の上司で毒親だった鳥羽とその娘・奈月、ふたりの会社のハラスメントについて描く漫画『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』。2作の原作者である中川瑛さんは自身も妻へのパワハラを行ってきた元DVパワハラ加害者だといいます。現在はGADHA(ガドハ)というDV加害者が集まるコミュニティやPaToCa(パトカ)という親子関係に関するコミュニティを運営している中川さんに、2作が生まれた経緯やコミュニティで得た知見についてお話を伺いました。

――作中の主人公と中川さんは環境を含め全く別の人なんですよね。となると実話ではなく、お話を作っていったことになると思うのですが、参考にしたものはありますか?

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中川瑛さん(以下、中川):僕自身子どもはいませんし、企業で働いた経験もありません。なので、話を考える上でふたつのことを参考にしました。ひとつは夫婦関係が上手くいかなかった人たちの典型的な例です。GADHAで話を聞く中でもよくあるんですが、DV、モラハラがある夫婦関係は同じようなプロセスを辿る方が多いんです。もうひとつは加害者変容というものがどのようなプロセスを経ていくかの理論です。

 本作の主人公・翔もそうですが、配偶者に出ていかれた時に、最初は非常に被害者意識を強く持つんですね。しかし、自分がケアされてきたことを感じると、自分がケアを返していなかったことに気付けたり、それゆえに周囲をケアし始められるようになったり、無自覚だった過去の自分が傷ついた経験に自覚的になることで、人の傷つきも理解できるようになったり、ということがあります。この理論もGADHAの方々の経験をヒアリングしていくことでわかっていったことですね。いずれもGADHAの活動がこの漫画の背景になっていきました。

――なるほど。Amazonのレビューで「昔の自分に似ている」「夫に読んでもらいたい」といった感想が書かれていました。当事者の方が読んでもリアリティがあるのだと感じたのですが、それはGADHAの方たちのお話から生まれているからこそのリアリティなんですね。

中川:そうだと思いますね。GADHAに参加していただいた方ってこれまでの4年間で約1600人いて、投稿数は6万7000近くあります。ものすごい数ですよね。これほど「変わりたい」と願う加害者の生の声を聞いた人間はなかなかいないんじゃないかと思います。

――その生の声を漫画にする上で、龍先生や編集の方と話し合ったりはされたんでしょうか?

中川:以前、小説を書いたこともあるので、物語を作るという意味ではある程度慣れているつもりでした。しかし、漫画になった状態のものを見せていただいた時はやっぱりすごいなと感じました。「漫画としてこういうふうに表現するんだ」と思いましたし、書籍として一冊にまとめる構成だったり。とても勉強になりました。

取材・文=原智香

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