「妻とはこういうもの」人間を役割で捉えている? DV・モラハラ加害者の傾向とは【著者インタビュー】

マンガ

公開日:2025/9/28

「自分は有能で、仕事も家庭もうまくやっている」そう思っている勝ち組の夫・翔。そんな夫とは裏腹に、夫の機嫌を絶えずうかがい、傷ついてきた妻・彩。自分がモラハラ被害者と気づいた彩は、娘を連れて家を出て行った。変わりたいけど変われない、もがき苦しむ夫。壊れた夫婦関係を修復しようと努力するが、妻が出した結論は――。そんな一組の夫婦を描いた漫画『99%離婚 モラハラ夫は変わるのか』。そして、翔の上司で毒親だった鳥羽とその娘・奈月、ふたりの会社のハラスメントについて描く漫画『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』。2作の原作者である中川瑛さんは自身も妻へのパワハラを行ってきた元DVパワハラ加害者だといいます。現在はGADHA(ガドハ)というDV加害者が集まるコミュニティやPaToCa(パトカ)という親子関係に関するコミュニティを運営している中川さんに、2作が生まれた経緯やコミュニティで得た知見についてお話を伺いました。

――翔は結婚した途端、家事を「お前の仕事だろう」と妻に押し付ける描写があります。同じような経験をしたことがあると共感する方が多いのではないかと思うのですが、この描写はどのようにして生まれましたか?

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中川瑛さん(以下、中川):僕が話を聞いた中にそういう人がたくさんいたからですね。背景としてあるのは、DV・モラハラ加害者の多くは人間を役割で捉える傾向があるというのがあります。「妻とはこういうもの」「結婚するというのはこういうこと」という自分の中に思い込みがあって、それをもとに人と関わってしまう。相手がどう思っているか聞いたり、話し合ったりという選択肢がない。自分がこうだと思ったら、相手がそうすることが当然だという感覚を持っている。その具体例として一番わかりやすいのが「家事を押し付ける」なので主人公の翔に体現してもらいました。

 ただ、自分がめちゃくちゃしっかり家事をやることによって相手にプレッシャーを与えるというパターンもあるんです。DV・モラハラ加害者の方でも「家事は誰でもするものだ」と思っていたらするんですよ。でも、そのやり方とかクオリティについて対話なしに「当然こうするだろ」と相手に押し付けて追い詰めたりします。パターンは人それぞれですが、共通しているのは自分の思い込みをもとに人と関わってしまうところですね。

――なるほど。家事育児を巡って対立する夫婦は多いと思うので、GADHAに参加するきっかけもそのあたりにある方が多いのかなと思ったのですが、実際にはいかがでしょうか?

中川:それも大きく要因としては出てくると思うのですが、実際は離婚別居の危機になって、いろいろ調べる中でGADHAに出会った方だったり、奥さんからの勧めがあったりして参加する方が多いですね。離婚別居に至った理由に家事育児もありますが、例えば子どもを含めた家族旅行をしている最中にイライラして子どもに気を遣わせてくるというパターンもあります。モラハラはあらゆるシチュエーションでの積み重ねで起きているという印象があります。

取材・文=原智香

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