婚約者や職場での人間関係に苦しむ娘。さまざまな場所に現れるモラハラの歪み【著者インタビュー】
公開日:2025/9/30

「自分は有能で、仕事も家庭もうまくやっている」そう思っている勝ち組の夫・翔。そんな夫とは裏腹に、夫の機嫌を絶えずうかがい、傷ついてきた妻・彩。自分がモラハラ被害者と気づいた彩は、娘を連れて家を出て行った。変わりたいけど変われない、もがき苦しむ夫。壊れた夫婦関係を修復しようと努力するが、妻が出した結論は――。そんな一組の夫婦を描いた漫画『99%離婚 モラハラ夫は変わるのか』。そして、翔の上司で毒親だった鳥羽とその娘・奈月、ふたりの会社のハラスメントについて描く漫画『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』。2作の原作者である中川瑛さんは自身も妻へのパワハラを行ってきた元DVパワハラ加害者だといいます。現在はGADHA(ガドハ)というDV加害者が集まるコミュニティやPaToCa(パトカ)という親子関係に関するコミュニティを運営している中川さんに、2作が生まれた経緯やコミュニティで得た知見についてお話を伺いました。
――『99%離婚 モラハラ夫は変わるのか』、『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』と2作を中川さん、龍さん、編集さんと同じチームで作ったわけですが、制作方法に違いはありましたか?
中川瑛さん(以下、中川):一作目では、私は物語というよりはグラフや資料などをお渡しして、それをもとに龍さんと担当編集さんが漫画を作っていってくださった形でした。二作目はもう少しシナリオっぽいものを僕が作りましたね。そしてそれをもとに三人で打ち合わせをして、プロットを作っていった感じです。
――打ち合わせの段階で悩まれたことはありますか?
中川:たくさんあります。ラストをどう持っていくかもそうですし。あとシナリオの段階では、もっと登場人物が多かったんですよ。職場の話と親子関係の話は僕にとってはどちらもテーマを語る上では欠かせないものだったので、両方盛り込みたいと思っていて。2作目の主人公である奈月は、父である鳥羽からのモラハラを受けて育ちましたが、そこでの傷が婚約者や職場での人間関係に影響を及ぼしています。また、毒父であった鳥羽も、加害は夫婦・親子間だけではなく、職場でもあったわけです。それで家庭と職場とそれぞれのパートを作っていったんですが、結果職場のパートが重くなってしまって。そのあたりを龍さんと担当編集さんが取捨選択をしてくれました。「登場人物を増やすと感情移入のポイントがバラケてしまう」というアドバイスもありましたね。漫画のプロのおふたりからの視点はありがたかったです。
取材・文=原智香