除霊をしながらキラキラ高校生活を謳歌! しかしその裏で蠢く陰謀とは? シリアスパートも見逃せない悪霊退散青春コメディ『ファントムバスターズ』【書評】
PR 公開日:2025/10/3

鎌倉を舞台にイマドキの男子高校生たちが部活動を立ち上げる。その目的は……除霊!
『ファントムバスターズ』(ネオショコ/集英社)は、今話題の悪霊退散青春コメディ。「全国書店員が選んだおすすめコミック2025」や「アニメ化してほしいマンガランキング2025」などにランクインし、2025年10月時点で第1〜6巻の累計発行部数100万部を突破した作品だ。
高校に首席合格した超優等生の是岸遊人(これきしゆうじん)が、同級生で幽霊を喰って除霊できる宍喰野虎落(ししくのもがり)と出会うところから物語は始まる。
霊を喰らう少年が除霊部「ファントムバスターズ」を結成
是岸は、高校近くの湘南の海で宍喰野虎落ことモガリと知り合う。モガリはこの海には噂通り亡霊がいると言うが、霊感ゼロの是岸は幽霊の存在を信じなかった。だが実際に、海岸にいた彼の足を「何か」が掴み、海中へ引きずり込もうとする。必死に助けようとするモガリ。そこに通りかかって手を貸したのがふたりの同級生・観崎薫(かんざきかおる)だった。観崎は霊感、特に強い霊視能力を持っていた。彼に触れたモガリは霊を視認することができ、霊を喰ってたちまち除霊する。
モガリの家は古より「霊を喰らう」能力をもち、除霊を生業にしてきた一族であった。そんな家の本家の跡継ぎであるモガリだが、ひとりでは霊を視認できない半人前であったことから、高校生活を満喫したいがために鎌倉に来たという。霊が集まりやすい場所の鎌倉で除霊修行を行うという名目で家を出ることを許されたのだ。
モガリは、鎌倉に居続けられるよう除霊活動は行うつもりだった。そのために霊感のある仲間を集めて、超常現象研究部という名の除霊部「ファントムバスターズ」を立ち上げる。メンバーは同じ高校に通う4人。霊感は一切ないものの、それ以外のスペックが高いコレシキ(是岸)。霊を見られるザキ(観崎)。さらに霊の声を聞くことができるタモンこと多聞康太郎(たもんこうたろう)を部員に加える。モガリは除霊をこなしつつ、彼らと高校生活をエンジョイしようとするが――。
キラキラの青春イベントの裏で始まる霊能ガチバトル
冒頭で「悪霊退散青春コメディ」と書いたが、確かに作品の雰囲気は全体的にコメディタッチだ。しかし、物語はザキとタモンの明るくはない過去にもフォーカスし、彼らの家族との関係や因縁を描いていく。
そしてもちろん、モガリの過去と宍喰野家についても語られる。とにかく地元を出て人生を楽しみたいと仲間たちに言ってきた彼も、やがて自分の家の闇、自分自身の過去に向き合わざるをえなくなる。
宍喰野家からは、お目付け役として宍喰野斂(ししくのれん)がやって来た。彼は実は隙を見てモガリの命を奪おうとする暗殺者であった。また、宍喰野家の対抗勢力である京都の陰陽師の一族・勘解由小路家からの刺客も登場。除霊を目的にしたファントムバスターズだったが、能力者である人間たちと対峙することになるのだ。
第6巻では、除霊はこなしつつもダラけきっている夏休みから始まり、ひそかにオカルト大好きな生徒会長を助ける体育祭を経て、「死んだ友人の思いに応えてほしい」とバンド演奏を依頼される文化祭といった高校生らしいキラキラのイベントを迎える。
しかし高校生活を謳歌するモガリたちの裏で宍喰野家が動き出していた。第5巻で描かれた京都の陰陽師の刺客がモガリを狙った事件。これを聞いた宍喰野家の現当主は、モガリを鎌倉から呼び戻そうとする。一方、斂には宍喰野家の分家から明確なモガリの抹殺命令が下される。
斂は鎌倉に来てすぐモガリに殺意を気づかれ、それから本気でモガリを殺そうとはしてこなかった。だが斂は腹をくくり、暗殺のためモガリの部屋の前に立つ。そこに声をかけてきたのは、ファントムバスターズの顧問で除霊師の過去をもつシャルル・ド・ノワール・守。斂の殺気に気づいたノワールは、教師として彼の前に立ちふさがる。大人の霊能力者同士の激しいバトルも第6巻の大きな見どころだ。
部活のノリで始めたドタバタの除霊活動は仲間との絆を深めつつ、彼らの過去や宿命と対峙するシリアスな状況と地続きになっていく。
鎌倉を舞台にした一筋縄ではいかない男子高校生たちの除霊×青春ストーリー。彼らの活躍と行く末が気になったら、ぜひ手に取ってほしい。
文=古林恭
