無添加食品、オーガニック素材の服、石鹸は使わず菌と共生…「宇宙育児」という自然を基準にした育児方法に傾倒したママたちと、その家族の行く末は?【書評】

マンガ

公開日:2025/9/30

 子どものために良いことをしているだけなのに……。『ママ友は「自然」の人』(山田ノジル:原作、すじえ:作画/竹書房)は、初めての育児に奮闘する主人公が「自然」を育児に取り入れるママたちと出会い、その考えや生活に傾倒していく姿を描いた物語である。

 子どもの将来を考えて節約を目的に義実家との同居をしている歩美は、義実家の仕事を手伝いながらワンオペ育児と家事に追われる日々を過ごしていた。忙しさも相まってなかなか気の合うママ友が作れずに孤独を感じていたとき、偶然見つけた育児サークルに居場所を見出していく。宇宙を基準にした考え方で「自然」を愛するママたちとの交流が心の支えとなるが、そこに深く関わるほどに家族との心の距離は広がっていってしまう。そんな中、サークルを揺るがす事件が起きて――。

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 育児の不安と孤独から「自然」にのめり込んでいく歩美。幼い頃に刷り込まれた価値観を生かして活動するママ友・悠月。そして枠にはまらない子どもに悩みつつも、行動力とリーダーシップを持つサークルの代表・真理子。きっかけも性格もバラバラな3人が、子育てに「自然」を取り込むことで繋がっていく。食べ物は徹底して無添加、着る服はオーガニック素材、菌と共生するため石鹸は使わない、など一見すると「極端すぎるのでは?」と考える人が多いかもしれないが、それぞれの科学的な背景や地球環境に関わる部分などが見えると、「自然」基準の生活にハマっていく彼女たちの姿は決して他人事ではないと思わされる。

 子どもにより良いものを与えたい、危険なものは避けたいというのは当然の親心。だが膨大な情報が行き交う現代で、何をどう選べばよいのだろうか。子どものためと信じ実践している歩美を、周りの人間は頭ごなしに否定することはできない。しかし、いわゆる「普通の生活」を望んでいる家族とは理解しあえずにバラバラになってしまうのか。そして熱量高く盛り上がっていたサークルの行く末は。

 さまざまな価値観が尊重され、多様性を重視する現代社会のなか、子育て中の人はもちろん、生き方で不安や迷いを抱える人に参考になる部分が多い作品ではないかと思う。

文=ネゴト / Ato Hiromi

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