赤坂アカ×あおいくじら×アジチカによる新作! 甘美なメルヘンの世界を舞台に愛を描く…と思いきや、予測不能のおぞましい展開が待ち受ける『メルヘンクラウン』【書評】

マンガ

PR 更新日:2025/10/18

 メルヘンクラウン
メルヘンクラウン(赤坂アカ×あおいくじら×アジチカ/集英社)

『【推しの子】』(集英社)の原作で知られる赤坂アカ氏が手掛ける新連載に、多くの人が強い衝撃を受けている。そのタイトルは『メルヘンクラウン』(集英社)。『ギークサークルクライシス 姫の恋路はバグだらけ』(集英社)などのあおいくじら氏と、『終末のワルキューレ』(コアミックス)の作画で知られる4人組漫画家ユニット・アジチカが共著となる超豪華な布陣の作品だ。描かれるのは、メルヘンな世界を舞台とした究極の愛の姿。だがそこには愛という言葉の印象から醸し出される甘い読み心地はない。むしろこの作品はバトルものというべきかもしれない。突然、身の毛もよだつ恐ろしい展開となり、一体どこへ連れていかれるのか分からなくなる。そんなとてつもなく刺激的な作品なのだ。

 むかしむかし、とある深い森の中に、人知れず佇む一基の高い塔があった。その塔で暮らす少女・ラプンツェルがこの物語の主人公だ。塔の主である魔女から「外は邪悪な人間で溢れ、恐ろしい出来事に満ちているから外に出てはいけない」と言われ、その言いつけを守ってきたが、ある日、鍛冶屋の息子・ミケルが塔を上って訪ねてくる。何度も会って話をするうちに次第に仲良くなったふたりはやがて恋仲に。そして、ラプンツェルはミケルとともに、初めて外の世界へ出る……。

 ラプンツェルとミケルの姿を微笑ましいような、くすぐったいような気持ちになる第0話から一変し、その後の外の世界に出てからの展開には背筋が凍った。外はおぞましい姿の「呪人」が闊歩する世界で、あまりの気味の悪さに思わず悲鳴が漏れた。そんな「呪人」を次々と狩る王都の人間が現れ、ミケルにこの場から離れるよう忠告するが、「呪人」を「家族」と言い張るミケルに対して容赦なく剣を振り下ろす……。衝撃的かつ怒涛の展開にただただ息を呑む。

僕はこんなだけど君を守りたい その想いはすこしも変わっていないんだ

 ミケルはそう言うが、最愛の人の姿が変わってしまったらあなたならどうするだろうか。ラプンツェルは当然動揺を隠すことができない。

ミケルの事…今でもすごく大好きだけど 彼を怖いと思ってしまう自分がいる ミケルは…あんなふうになっても 心は優しい彼のままなのに

 だが、愛する人を置き去りにすることはできず、ラプンツェルはミケルを連れて森を進む。その先には何が待っているのか。どうにか辿り着いたところは、あのお伽噺の姫に牛耳られている国のようで……。一体全体この世界は何がどうなっているのか? 呪い、呪人とは? ラプンツェルとミケルはどうなるのか? 積み重なっていく謎のせいでページをめくる手を止めることができなくなる。

 メルヘンという名の皮をかぶった悪夢のような物語。果たして、ラプンツェルとミケルが辿る道の果てに救いはあるのか。それともさらなる絶望が待ち受けているのか。手にとってしまったが最後、あなたはこの物語から逃れられなくなっているだろう……。

文=アサトーミナミ

『メルヘンクラウン』を無料で試し読み!
『メルヘンクラウン』を無料で試し読み!

あわせて読みたい