大人だって遊びたい! のんびり女子3人組の友情物語『ぷらぷらチッケッタ』でほのぼの気分を味わう【書評】
公開日:2025/10/4

子どもの頃、空き地の草むらや公園の水たまりは宝物のように輝いて見えた。
『ぷらぷらチッケッタ』(ぐみさわ/KADOKAWA)は、そんな童心をもう一度思い出させてくれるマンガだ。社会人女子3人が織りなすのんびりとしたコメディを読めば、何気ない日常も少し鮮やかに見えてくるはず。
どんくさく会社では浮きがちな狸穴(まみあな)。ひとりぼっちの日々を送っていたが、ある日先輩の谷戸(やと)が公園の遊具で遊んでいるところに遭遇する。
優秀だが周りに距離を置かれるクールな谷戸。狸穴は先輩の意外な姿に驚きつつ、一緒に遊ぶことに。
やがてそこに、谷戸と狸穴それぞれと顔見知りの埴谷(はにや)も加入。こうしてなんでもない3人の時間が始まった。
会話のテンポは絶妙にゆるく、読んでいて心地が良い。狸穴はのんびりしていてドジだが、いつも一生懸命で可愛らしい存在。埴谷は、そんな狸穴を推し続けており、言動がコミカルで面白い。そして谷戸は見クールに見えて、どこか不思議な行動で場をかき回す。
三者三様の個性が緩やかに混じり合い、どこまでも平和で楽しい会話が続いていく。
3人が楽しむ遊びは、お金や道具がいらないものばかり。だるまさんが転んだをアレンジして遊んだり、ため口で会話するゲームを試したり、あるいは思い切って海に出かけたり。
彼女らが無邪気に笑い合う姿は、幼い日の純真さを思い出させてくれる。ミスした書類を届ける夜のドライブさえも、3人にかかれば大切な時間に変わる。
大きな事件は何も起こらない。ただ、くだらないやりとりや小さな遊びの連続が、読者の心をほぐしてくれる。童心にかえり、次の休日がちょっと楽しみになる。そんな不思議な1冊だ。
文=ネゴト / fumi