10月からアニメ放送『機械じかけのマリー』。完結後も目が離せない、人間不信男とロボットメイドのラブコメ【書評】
公開日:2025/10/3

人は、無意識レベルで相手の表情から状況を読み取っている。そのため感情表現が下手で感情をうまく表に出せないと、相手から誤解を招き孤立してしまうことも多い。もっと素直に笑えたら――と思っている人も少なくないのではなかろうか。だが、人間不信な人間嫌いの前では、もしかしたらその無表情が役に立つこともあるかもしれない――。
10月5日より待望のTVアニメ放送が始まる『機械じかけのマリー』(あきもと明希/白泉社)は、ロボット級の感情表現下手くそ人間と、人間不信を極めた男のドタバタを描いたラブコメディ。原作コミックスは全6巻で完結しており、完結後の新婚編を描いた『機械じかけのマリー+』(あきもと明希/白泉社)も人気を集めている。また、同著者の、先祖代々対立する宿敵ヤクザ同士の恋愛攻防戦を描いた『まいりましたと言わせたい』(あきもと明希/白泉社)1巻にも、『機械じかけのマリー』番外編としてデートの様子が収録されており、その注目度の高さがうかがえる。
本作品の主人公は、元天才格闘家という経歴を持つ無表情な少女マリー。親が作った借金の返済でお金に困り、工事現場で働いていたマリー・エバンズは、ある日見知らぬ男から「メイドをしてもらいたいんだ… ロボットとして…」という無理難題をふっかけられる。


そして借金を返済し学校へ通わせてくれるという条件につられ、国内一の大企業であるゼテス財閥の御曹司アーサーの専属ロボットメイドとして働くこととなった。

アーサーは愛人の子で、なのに跡継ぎとして選ばれたことから親族に命を狙われ続ける日々を送っている。おまけに外へ出れば財産目当ての女が寄ってきて、心休まる時間など微塵もない。それゆえ、超がつく人間嫌いな冷酷男として周囲を震え上がらせていた。

だが、そうした裏切りの心配がないロボット(だと思い込んでいる)相手ならば話は別だ。日々の寂しさや孤独を埋めるかのようにマリーに甘え、可愛がり、素をさらけ出していく。


これまでの生い立ちから嘘を何より嫌うアーサーに対し、「自分はロボットである」ととんでもない嘘をついているマリー。でも、人間だとバレたら処刑されるかもしれない、彼を傷つけてしまうかもしれないという不安や後ろめたさと戦いながらも、本来のアーサーが持つピュアな心や優しさに惹かれていく。


アーサーと出会うまでのマリーにとって、うまく表情を出せないロボットのような自分はコンプレックスでしかなかった。アーサーがマリーに救われたのと同様に、マリーもアーサーに救われていたのだ。
人付き合いが苦手でも、人間不信でも、心の底から人間が嫌いとは限らない。できることなら信頼し合える相手がほしい、と思う人だって少なくないはず。筆者もあまり人付き合いが得意な方ではないので、そうした歯がゆさは痛いほど分かる。2人を見ていて、本当にいい出会いを得たなと羨ましく思ってしまった。
また、マリーとアーサー以外の登場人物が2人に負けないくらい個性豊かなのも大きな魅力の一つ。いたって真剣にマリーをロボットメイドへと仕立て上げた張本人のロイや、諸事情でマリーの代わりにと連れてこられた高性能(?)な人型ロボット「マリー2」、アーサーへ差し向けられた暗殺者でありながらも何かと2人の世話を焼いてしまう激強な刺客のノア、アーサー様ファンクラブの面々など、どのキャラをとってもどこか憎めない、目が離せない人たちばかり!


最終巻では2人の関係に大きな進展が訪れるも、アーサーが記憶喪失になるなど最後まで大きな波乱が巻き起こっていく――。こうした2人の互いを思い合う気持ちと攻防戦、2人の変化がアニメでどう描かれていくのか、今から楽しみで仕方がない。ちなみに声は、マリー役を東山奈央さんが、アーサー役を石谷春貴さんが務める。既に読了済みの人も未読の人も、改めて原作を読みつつ気持ちを高めておくと、よりアニメを楽しめることだろう。
文=月乃雫