東大卒コンビ・無尽蔵のコラム連載「尽き無い思考」/第22回(やまぎわ)「好きで始めたことなのに何故しんどいと思う時があるのでしょうか」

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公開日:2025/10/2

東大卒コンビ・無尽蔵のコラム連載「尽き無い思考」第22回
東大卒コンビ・無尽蔵のコラム連載「尽き無い思考」第22回 撮影=booro

サンミュージックプロダクションに所属する若手の漫才コンビ・無尽蔵は、ボケの野尻とツッコミのやまぎわがどちらも東大卒という秀才芸人。さまざまな物事の起源や“もしも”の世界を、東大生らしいアカデミックな視点によって誰もが笑えるネタへと昇華させる漫才で、「M-1グランプリ2024」では準々決勝に進出・「UNDER5 AWARD 2025」では決勝に進出し、次世代ブレイク芸人の1組として注目されている。新宿や高円寺の小劇場を主戦場とする令和の若手芸人は、何を思うのか?“売れる”ことを夢見てがむしゃらに笑いを追求する日々を、この連載「尽き無い思考」で2人が週替わりに綴っていく。第22回はやまぎわ回。

【写真】ネタライブを配信中の無尽蔵
【写真】ネタライブを配信中の無尽蔵 撮影=booro

第22回(やまぎわ)「好きで始めたことなのに何故しんどいと思う時があるのでしょうか」


お疲れ様です。やまぎわです。先日、無事に「無尽蔵がありったけネタをやるライブ episode:6」が終了いたしました。

渋谷ユーロライブに満員のお客様が来てくださったことを本当に不思議に思います。
アーカイブ配信も開始しておりますので、よろしければご覧ください。プロに頼んでおりますので、画質・音質は保証しますよ!

にしてもやはり疲れました…。身体的にも精神的にもです。こういう大きなライブが終わった後は「こんなしんどいこと二度とやらねー!!」という気持ちになってしまうこともあります。でも半年とか1年したらまたやってるんだから不思議ですよね。

 撮影=booro


今回のコラムは、僕ら人生に度々訪れる「好きで始めたことなのに、なんでこんなしんどいと思う時があるのか」という問いについて本気出して考えてみようと思います。

僕らの人生は選択の連続です。多数の選択肢がある「どうとでもなれる状態」から、その時々の判断基準において一つの道を選択してきました。

そこに明確な「決断の瞬間」が無かったとしても、今この時に一通りのあなたしか存在していないということは、意識か無意識かは問わず何かしらの決断があったはずです。

決断に伴うのは、「お前が決めたんだろう」という責任です。

子供の頃はほとんどの事を親が決めますが、入る部活、文理選択などを自分で決断して行くことで人は大人になっていきます。人生に自分の決断が占める割合が増えることで、「この人生は自分が決めた結果である」という論理が適用され、成功も失敗も全て自分の責任となっていくわけです。

だから今、僕が社会人と芸人の両方をやっていることも自分の決断の結果です。僕がいかに「無尽蔵がありったけネタをやるライブ」の翌日出社してヘロヘロになって「つらい」と言ったとしても、「いや、お前が始めた物語だろ」と言う話に過ぎません。誰にも助ける義理はないのです。

テスト勉強をギリギリまでやらなかったのは自分なのに「昨日徹夜でマジキッツイわwww」とイキってる奴と性質としては大して変わりません。

 撮影=booro


でもキツいのは本当じゃないですか。そう言う時はどうしたらいいんでしょうね。

僕にとっては勉強もそうですが、なんで人は好きで続けていたはずのことをあたかも辛いことのように思って楽しよう楽しようとしてしまうんでしょう。

やはり人は日々怠惰との戦いであり、それに勝てた人間だけが成功を収められるのでしょうか。辛いなぁ嫌だなぁと思う気持ちもただの怠惰の現れであって贖うべき罪なのでしょうか。

ただ一つ、僕たちにも反論できる余地があるとすれば、それは「状況は常に変化し続けている」ということです。

人の人生はほんの数パーセントしかコントロールできない世界です。周りの人間や、取り巻く環境、引いては自分の体調すら、自分でコントロールし続けることは難しいでしょう。

僕が最初に「漫才やってみたい!」と思った高校1年生の一番初めの決断の瞬間と、今この瞬間ではあまりにも状況が変わっています。

「お笑いをやりたい」と言う言葉一つとったって、昔と今ではその裏に込められている意味も違うでしょう。昔は遊びの範疇でただお笑いができていればそれで良いと思っていました。今はお笑いから広がるコラムやラジオのような新しい出会いも楽しんでいます。

(もちろん、自分の深淵に眠っていた面白の種を具現化できた時の高揚は未だに失っていません。)

 撮影=booro


誰しも未来は予測できません。状況は自分の知らないところで四六時中変わり続けています。その中で自分の理想と変化する現実のギャップを感じて「つらい」という気持ちになることは、誰にも責められることではありません。

であれば過去の決断に拘泥し続けるのではなく、その時々の最善を選び続ければ良いのでしょう。どの道責任を取るのは自分なのですから、続けたければ続ければ良いし、辛いと思うなら辞めれば良いのです。

芸人の解散のニュースも相次いでいますが、残念とは思えど止めたいとは思いません。過去の決断に対しての責任を取り続ける必要はありません。必要なのは今の決断によって未来に生じるリスクを引き受ける覚悟です。

どうせ自分の力でコントロールできない世界なのであれば、そのうち勝手に世界の状況が変わって、最適解も変わって、自動的に次の決断を迫られる時がくるでしょう。それまではただ続けられることを続けていれば良いのかなと思っています。

それにラジオの特番も決まったり、ユーロライブが満員になったり、まだまだ無尽蔵の場況は良いようです。何より楽屋、舞台を問わず楽しいと思える時間があるのであれば、現状は「とりま続行」が良いと考えています。

 撮影=booro


■無尽蔵
サンミュージックプロダクション所属の若手お笑いコンビ。「東京大学落語研究会」で出会った野尻とやまぎわが学生時代に結成し、2020年に開催された学生お笑いの大会「ガチプロ」で優勝したことを契機としてプロの芸人となった。「M-1グランプリ2024」では準々決勝に進出、「UNDER5 AWARD 2025」では決勝に進出。
無尽蔵 野尻 Xアカウント:https://x.com/nojiri_sao
無尽蔵 野尻 note:https://note.com/chin_chin
無尽蔵 やまぎわ Xアカウント:https://x.com/tsukkomi_megane

<第23回に続く>

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