「アガサ・クリスティー検定」例題も紹介。“愛される出版社”早川書房初の読者参加型イベント「ハヤカワまつり」潜入レポート!
公開日:2025/10/16

2025年で創立80周年を迎えた早川書房は、9月14日・15日に記念イベント「ハヤカワまつり」を開催。2日間にわたり豪華ゲストを招いたトークイベントや物販、読者参加のイベントなどで盛りあがった。
豪華ゲスト目白押しの2日間
1日目は、三谷幸喜さんと山崎玲奈さんによるトークイベント「アガサ・クリスティーを語る!」を皮切りに、二大SF作家による「神林長平と円城塔が、雪風について語るべきこと」や、香港で大ヒットを記録し日本でも話題となった映画「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」の原作者である余兒さんを招いた公開読書会など、ファンにはたまらない催しが続き、他ブースでは両日にわたりトークイベントに関連した書籍のフェアや、創立80周年を記念して総勢80名の著名人が推薦した〈ハヤカワ文庫の80冊〉フェアなどの販売。あわせて早川書房オリジナルブランドのグッズレーベルHAYAKAWA FACTORYの物販が行われた。
そのほかビブリオバトルや就活セミナーなどの特別企画、来場者参加による「アガサ・クリスティー」検定ではクリスティ作品に関する問題(全10問)が出題されるなど(2名が全問正解)、トークイベントだけでなくさまざまな催しが来場者を楽しませた。
「アガサ・クリスティー検定」で出題された一部(答えは記事最後に)
1. 名探偵ポアロが推理の際に誇る脳細胞の色は?(ポアロシリーズ『ポアロ登場』より出題)
A. ピンク色
B. 銀色
C. 灰色
2. 老婦人マープルが参加した火曜の推理合戦会の人数は?(マープルシリーズ『火曜クラブ』より出題)
A. 6人
B. 8人
C. 13人

また、会場には早川書房から翻訳刊行された海外作家たちによる祝80周年の直筆メッセージが掲示され、ノーベル文学賞受賞者カズオ・イシグロやサイバーパンク小説の金字塔『ニューロマンサー』のウィリアム・ギブスン、そして『ファイト・クラブ』のチャック・パラニュークなどファンにはたまらない展示ばかりだった(ちなみに『ファイト・クラブ』の担当者は本作を復刊したくて早川書房に入社したという)。



愛される出版社「早川書房」とは
早川書房は演劇書と海外文芸作品の翻訳出版を志した創業者早川清氏により1945年8月15日の終戦と時を同じくして創立。1947年に演劇雑誌『悲劇喜劇』を創刊し、1953年からミステリ作品、1957年にはSF小説の翻訳作品を刊行。戦後から現在まで長きにわたり海外のSF小説やミステリ、ノンフィクション、文学作品を翻訳し国内に紹介し続けてきた国内屈指の出版社である。ミステリではレイモンド・チャンドラーやアガサ・クリスティー作品、SFではフィリップ・K・ディック、文学ではノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロやヨン・フォッセなど、翻訳小説の代表作は枚挙にいとまがなく、また近年ではノンフィクションでもノーベル賞の物理学賞や経済学賞関連作の翻訳書を早川書房が手がけていたことが話題になるなど、国内でもひときわ大きな存在感を放つ出版社だ。
そんな歴史と個性をあわせ持つ早川書房だが、意外にも〈ハヤカワまつり〉のような読者参加型の単独イベントは今回が初めての開催だった。
トークイベント班リーダーで早川書房ミステリマガジン編集部の井戸本氏によると、創立80周年という節目に読者と早川書房社員を繋げる企画を実現したいという思いが実行班チームの結成時からあり、当初はトークイベントだけの企画だったものの、せっかくなら物販も、どうせなら二日間にしようと、企画の構想が膨らんでいき今回のようなイベントとなったという。結果的に総来場者約1300名に上り、アンケートでは90%を超える読者から「満足」という評価を得た。
また早川書房の面白いところは「早川書房のファン」という、作品だけでなく出版社に対してのファンもいることであり、三谷幸喜さんをはじめ、イベント登壇の依頼をゲストのみなさんが「早川書房なら」と快く引き受けてくれたという。読者もまた早川書房の社員と交流できることが来場の動機という人が多かったそうだ。このように、多方面から愛されているのが早川書房なのだ。
もちろん、早川書房創立80周年はこのイベントだけではない。
先述した80周年記念フェア〈ハヤカワ文庫の80冊〉では宇多田ヒカルさんや綾瀬はるかさん、映画監督の新海誠さんなど錚々たる顔ぶれの著名人80名が選んだ80作品をラインナップし、全国の書店で開催されている。
また同フェアのブックレットに登場しているのは今年から登場の早川書房オリジナルキャラクター「めくるふ」。同社創立以来の一貫した姿勢である「ONE AND ONLY」な本が好きな一匹狼である。
