「アガサ・クリスティー検定」例題も紹介。“愛される出版社”早川書房初の読者参加型イベント「ハヤカワまつり」潜入レポート!

文芸・カルチャー

公開日:2025/10/16

早川書房からデビューした二人の対談

 「ハヤカワまつり」潜入レポート

 最終日となる2日目は池澤春菜さんと小説紹介クリエイターけんごさんによる「読んで、語る『アルジャーノンに花束を』」や、カズオ・イシグロ原作の映画『遠い山なみの光』公開記念として、同作の監督を務めた石川慶さんと文芸評論家の三宅香帆さんのトークイベントを開催。

 そして本イベントの最後は小川哲さんと逢坂冬馬さんによる対談。小川さんは2015年に『ユートロニカのこちら側』で第3回ハヤカワSFコンテストを受賞し作家デビューし、2023年に『地図と拳』(集英社)で直木賞を受賞。逢坂さんは2021年に『同志少女よ、敵を撃て』でアガサ・クリスティー賞を受賞してデビュー。同作は第166回直木賞候補になり、最新作『ブレイクショットの軌跡』では今年の第173回直木賞でも候補作となった。ともに早川書房からデビューしたお二人による対談は「ハヤカワまつり」の最終日のトリを務めるにふさわしく、作家を目指した理由から作家論、そして創作術にいたるまで硬軟織り交ぜた対談で会場を沸かせた。

小川哲さん
小川哲さん

 デビューまでの経緯について、小川さんはまず専業作家になりたいという動機から逆算してデビューまでの戦略を練り自己分析し、当時作品として自信のあったSF作品で早川書房に『ユートロニカのこちら側』を投稿しデビュー。あくまでデビューの手段としてSFというジャンルを選んだその考え方は、SFに囚われずにジャンルを横断するこれまでの小川さんの作品を眺めれば納得である。そして逢坂さんは小川さんのデビュー2作目となる『ゲームの王国』を読んで「小川哲ショック」と呼ぶほどの衝撃を受け、この作品が『同志少女よ、敵を撃て』を執筆するきっかけとなったと告白。また小川さんによる逢坂さんの最新作『ブレイクショットの軌跡』評では、過去2作と比べて最もレベルの高い作品で今年の上半期トップと評価し、逢坂さんが3作目に何を書くのかに関心があったと語った。

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逢坂冬馬さん
逢坂冬馬さん

 来場者からの質問では作家志望者への投稿のアドバイスや、最新作『火星の女王』(10月22日発売予定)がNHK放送100年特集ドラマの原作となる小川さんと、早川書房のコミックレーベル〈ハヤコミ〉で自著がコミカライズもされている逢坂さんのお二人に、メディアミックスにおける原作者のスタンスなど興味深い質疑が交わされた。

 最後にこれからの早川書房について、逢坂さんは20年後の100周年記念のイベントにも参加できるよう作家を続けていきたいと語り、小川さんは次の100周年記念イベントでも自分が参加したいと思えるような良い本を出し続けている出版社でいてほしいとの言葉で「ハヤカワまつり」の最後を締めくくった。

  「ハヤカワまつり」潜入レポート

アガサ・クリスティー検定の例題の答え
例題1 C:灰色
例題2 A:6人

取材・撮影・文=すずきたけし

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