死体部屋に、延滞客からの罵倒…。家賃保証会社で11年間働いた理由は「僕より困った延滞客」をずっと見ていた」から【著者インタビュー】
公開日:2025/11/6

もし部屋の家賃が払えなくなったら、そのときは2つの選択肢しかない——。『出ていくか、払うか 家賃保証会社の憂鬱』(鶴屋なこみん、原案協力:0207/KADOKAWA)は、部屋の家賃を滞納した人の賃料を立て替え、その立て替え分を督促する家賃保証会社の管理(回収)担当者の仕事を追ったコミックエッセイだ。取り立てに向かうと契約者がご遺体になっていることもあれば、テレビでよく見る芸能人からひどい文句をぶつけられることも…。さまざまな理由で家賃を滞納する人たちのマンガを読んでいると、“一歩間違えれば自分も債務者になるのでは…”という恐怖が頭をかすめる。原案は「カクヨム」で家賃保証会社の実態を告白してきた0207さん。「過酷な業務によるストレスを解消するために書き始めた」という本人に、家賃を管理(回収)する仕事のディープな日常を聞いた。
※書籍発売当時の2023年以前のお話としてうかがっています。
——かなり苦労の多い仕事だと思いますが、11年間も家賃保証会社の社員を続けた理由とは?
0207:「惰性」です。他にできることもありませんし。僕は顔も頭も良くないし、実家が太いわけでもありません。就職氷河期世代ですけど、どの時代に生まれても苦労したと思います。
でも、しんどいけどまあいいやと思えたのは、僕より困っている延滞客をずっと見てきたからかもしれません。夜、ベランダでハイボールを飲みながら、“あ〜…あの延滞客たちよりは僕は困っていない”と考えていると、ホッと安心するんです。我ながら、見下げ果てた性根ですが。
——そんな家賃保証会社も昨年辞められています。どんな理由があったのですか?
0207:今さらですけど、きつくなりました。もういいだろ、と。以前は消費者金融で管理(回収)の仕事をしていました。家賃保証会社の管理(回収)担当者との違いは、「解決」をその担当者がしなければならないことかな、と。消費者金融は、回収できなくても、時間が経過すれば次の担当部署に移管される。「放置」する場合もあるでしょう。
家賃保証会社は、延滞客が部屋を使い続けている限りは、担当者が早く「解決」しなければならない。疲れたなあと。
——解決というと、「出ていくか、払うか」ですね。
0207:はい。消費者金融では、先ほど申し上げたように、カネを回収できなければ次の部署に流れていくし、追加で貸さないから元本は増えません。でも家賃は、延滞客が部屋を使っている限りは新たに「元本」が発生します。それは許容できない。
だから、それ以上増えないように「解決」しなければなりません。とはいえ、「(部屋を)出ていってくれ」と言って「わかったよ」には中々なりませんけどね。だからしんどい。
——マンガからも、ストレスが多い仕事であることが十分に伝わってきました。今は違う業界に転職されたそうですが、ストレスは減っていますか?
0207:もっと早く家賃保証会社を辞めておけば良かったと後悔しています。また似たような仕事ではあるのですが、延滞客の部屋に訪問する必要はありませんし、本当に楽です。
取材・文=吉田あき
