『放課後帰宅びより』冷凍食品のニチレイがコラボ!直帰ちゃんと瞬くんがお弁当づくりに挑戦、独特な食レポも必見【書き下ろしマンガ&作者インタビュー】

マンガ

PR 公開日:2025/10/31

――まず、特別賞「冷凍食品はニチレイ賞」の受賞おめでとうございます! 受賞の知らせを聞いたときの率直なお気持ちを教えてください。

松田舞さん(以下、松田):「次にくるマンガ大賞」は、読者さんからのエントリーと投票で決まる賞なので、作品の知名度的にランキングに入るのは難しいかなと思っていました。だから「冷凍食品はニチレイ賞」という、別の切り口で賞をいただけたのが本当に「なんでだろう?」ってくらい驚きでした。でも、受賞の知らせを聞いたときはすごく嬉しかったですし、純粋にありがたいなと思いました。

担当編集:授賞式のコメントでニチレイの方が、直帰ちゃんの家に遊びにいくシーン(2巻)の背景について「冷凍庫が大きいタイプの冷蔵庫」だと仰っていて、目のつけどころに驚きました。

松田:実はこれ、うちの冷蔵庫なんです(笑)。特に意味もなく、ただいつも見ている冷蔵庫をそのまま描いただけなのですが……。そう言っていただけるなんて、ラッキーでしたね。

――本日公開された特別コラボマンガは、完成までにかなり悩まれたとか。

松田:そうですね。昨年受賞された『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』は、美味しくたくさん食べていれば、コラボであってもマンガとして成立するという魅力のある作品です。でも、『放課後帰宅びより』はそもそもグルメマンガではないので、どうしたものか……と正直悩みました。

 ニチレイさんとのお打ち合わせを経て、最終的に直帰ちゃんと瞬くんが一緒にお弁当を作る話に落ち着いたのですが、ただ作るだけではなく、キャラクター同士の関係性も見せなきゃいけないし、コラボマンガなので食レポの要素はもちろん、商品の紹介もしなきゃいけない……。さらに、2ページか4ページくらいでという指定があったので「最大4ページで!?」とまたそこで悩みました。

――本編でありそうでなかった“二人でお弁当を作る”という、学園ものラブコメらしい展開があって、イチ読者としてとても嬉しかったです。冷凍食品のチョイスのポイントは?

松田:ありがとうございます。作中に登場させる冷凍食品も、「高校生だからボリュームのあるお弁当がいいかな?」とか、いろいろ考えました。でも、そうすると全体的に色みが茶色くなってしまうので、今度は「彩りどうしよう?」みたいな感じでまた悩んだり(笑)。そのあたりは、周囲の方にも相談しながら決めていきました。

――特に工夫した部分を挙げるとしたら、いかがですか?

松田:このコラボマンガで初めて『放課後帰宅びより』に触れる方もいると思うので、やっぱり直帰ちゃんと瞬くん、この二人がどんな関係性なのかが読んだ人に伝わらないとダメだよね、という話を編集さんとしていました。

 付き合っているのかな? どうなのかな? でも、ただの先輩・後輩ではないんだろうなぁ……みたいな。そうした“特別な関係性”が自然と滲み出てくれていたら良いなと。あとは、直帰ちゃんのかわいさが伝われば嬉しいなと思いながら描きました。

コラボマンガで松田先生が特に気に入っているシーン
コラボマンガで松田先生が特に気に入っているシーン

――ちなみに、先生にも冷凍食品がプレゼントされると伺っておりますが、ニチレイの商品について何か思い出などありますか?

松田:今、改めて食品リストを眺めていて思い出したのですが、「衣がサクサク牛肉コロッケ」には見覚えがあります。フリーター時代、お米とこのコロッケだけを詰めたタッパーをよく職場に持って行っていたんです。「これめっちゃ食べてたな!」って、急に思い出しました(笑)。知らないうちに、生活の一部に入り込んでいたんですね。

――ここからは『放課後帰宅びより』について、詳しくお伺いできればと思います。そもそも、どういった経緯で生まれた作品だったのでしょうか?

松田:前の連載(『ひかるイン・ザ・ライト!』)が終わってから、しばらく何も描いていなかったのですが、編集さんから「そろそろどう?」と次の企画についてお声がけいただいて。でも、その当時は本当に何も思いつかなくて……。それで、iPhoneのメモを見返していたら、「ハイパー帰宅部 直帰ちゃん」というタイトルだけが残っていたんです。

 そこで、ざっくりした企画を2本ほど書いて、3本目にそっと「ハイパー帰宅部 直帰ちゃん」を入れて提案してみたら、「ハイパー帰宅部がいいです!」と……。最初は、自分でもかなり予想外だったと言いますか、手探りの状態だったのですが、「帰宅部」という言葉から少しずつ世界を膨らませていったという感じですね。

――ちなみに、そういったメモが残っていたということは、先生ご自身が学生時代に帰宅部だったりしたのでしょうか?

松田:いえ、学生時代はしっかり部活をやっていました(笑)。中学はバスケ部で、高校ではハンドボール部でした。

 実は、「帰宅部」そのものを描きたかったわけではないんです。もともと学園ものを描きたいなという思いは以前からあって。でも、甲子園みたいな全国大会を目指すとか、そういう“てっぺんを取りに行く”タイプの話を描きたい気分ではなかった。そんな中で、「ハイパー帰宅部」というワードが先にあったので、帰宅部なら何か特別な目標がなくても描けるかもしれないと思ったんです。そこから、自分が好きなタイプの女の子を「帰宅部」という言葉に合わせて作っていきました。

――“自分が好きなタイプの女の子”ということは、直帰ちゃんは先生にとっての理想のヒロイン像を詰め込んだキャラクターなのでしょうか。

松田:そうですね。ラブコメのヒロインでいうと、私は主体性があって、好きなものがはっきりしている子が好きなんです。

――確かに直帰ちゃんは「ロマン」という独自の軸を持っていますよね。また、夢を失った瞬くんとの関わり方にも彼女らしさが出ています。

松田:癒やし系とはまたちょっと違うんですよね。決して「あなたを癒してあげます」というタイプではなくて、本人はそんなつもりがなくても、関わった相手が自然と感化されていく……。そんな存在が私にとっては理想のヒロインなんです。

――先生の理想が直帰ちゃんに反映されているとのことですが、だからこそ描くときに迷ったり、上手く描けないと葛藤したりすることもありそうです。

松田:コメディっぽいシーンなら、ノリでいけるといいますか、描いていて気楽なんですよね。でも、感情が動くシーンになると、二人の感情の機微みたいなものが全然わからなくなってしまって。そういう大事な場面ほど、手が止まってしまうんです。

 本当は、自分の気持ちが盛り上がって、その勢いのまま描けるのが一番良いと思うんですけど。恋心を描かなきゃいけないときほど、理屈をこねくり回して描いている気がします。例えば「高校生って、こんなこと考えるのかな?」みたいな部分で、すごく悩んでしまうんですよ。結局、自分の考えでしか描けないからこそ、今までこの二人が積み重ねてきたこととの矛盾がないかどうか、すごく考えながら描いています。

――なるほど。でも『放課後帰宅びより』ならではの、読者の期待を良い意味で裏切る胸キュンシーンの数々は、そういった感情の機微を丁寧に積み重ねているからこそ生まれるんだなと感じました。

松田:ありがとうございます。基本的に、直帰ちゃんと瞬くんが「あれやりたい」「これやりたい」って言っているイベント、だいたい上手くいっていないんですよね(笑)。例えば花火大会に行っても、ろくに見られなかったりとか。

 最新5巻に収録されている蛍を見に行く回だって、本当は蛍がワーッと飛んでいて、二人で「きれいだね」ってなったほうが、絵的にはどう考えてもエモいんですけど……。でも、この二人にはそれはちょっと違う気がしていて。つまり、私は“二人だけが得た、二人だけの思い出”みたいなところに着地したいんですよね。

 ただ、まっすぐイベントを終わらせるのではなく、この二人にしか体験できない時間を描きたい。だからこそ二人に合わせて描いている……そんな感覚です。

――蛍を見に行く回、本当に素敵でした。他にも、普段より直帰ちゃんと瞬くんの距離がぐっと近づいたりとドキドキの最新5巻ですが、見どころを挙げるとしたらいかがですか?

松田:5巻の見どころは、瞬くんのおばあちゃんの家でお泊まり会をするところです。今回は“付き合っていない状態でできる、ギリギリの接触”を描きたいと思っていて、その空気感をより丁寧に描くために、このお泊まり会の前後もしっかり描こうと決めました。

「ここまでやるけど、まだ付き合ってません」という、あの絶妙な距離感が、自分でも一番面白いなと思っているんです。もはや全然“帰宅”していないのですが(笑)、この二人にしか作れない夏の思い出を描いたつもりなので、ぜひ楽しんでもらえたら嬉しいです。

『放課後帰宅びより 5』
『放課後帰宅びより 5』(松田舞/双葉社)

――コラボマンガをきっかけに本作に興味を持ってくださった方に、おすすめポイントを挙げるとしたらいかがですか?

松田:直帰ちゃんという、少し変わった先輩と出会う後輩・瞬くん。そんな“ちょっと不思議な女の子に出会って始まる青春”みたいな、ボーイ・ミーツ・ガール的な要素を楽しんでもらえたらなと。あと、「この二人、本当に進展するの?」と思われる方も多いと思うのですが、ちゃんとしますので安心して読んでください。

――ありがとうございます。最後に本作を通じて読者に伝えたいこと、また作家として実現したい夢がありましたら教えてください。

松田:自分がこの作品を描くことに意味や意義があると思いたい……。王道のラブコメを描くのなら、本作を通して“恋愛”という題材の答えを出したいといいますか、恋の真理のようなものにたどり着きたい。そんなふうにいつも思っています。

 直帰ちゃんと瞬くん、この二人が青春を送り、物語を最後まで終えたときに、自分自身が「ラブコメって、これでいいじゃん!」と、心からそう思えるように描いていきたいです。

取材・文=ちゃんめい

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