離婚メーターの針が我慢の限界値に近づいていく――家事に対して非協力的な夫の態度に、自分自身の生き方と夫婦の在り方を問いかける物語【書評】
公開日:2025/11/1

夫婦の間には、日々の小さなイライラやすれ違いがつきものだ。『離婚メーター “自称”愛妻家な夫がヤバすぎる』(はたほまめ:漫画、はるのコタン:原作/KADOKAWA)は、そんな夫婦のリアルを「離婚メーター」というユニークな形で描く。共働き家庭の現実や、妻の抱く葛藤が綴られた作品だ。
主人公の真理子は、夫・孝一と共働きで生活し、仕事と家事の両立に奮闘しながら、いつかフリーランスの翻訳者として独立する夢を持っている。小さいころから憧れてきた英語を生かす仕事は彼女の生きがいであり希望そのもの。だが、孝一はそんな努力を理解してくれないばかりか家事の分担もせずに文句ばかりの夫に、真理子のイライラは少しずつ募っていく。
本作の特徴は、タイトルにもある「離婚メーター」だ。孝一の無神経な言葉を聞いたり、家事に非協力的な態度を見たりするたびにメーターが上がっていく。真理子の心の中に積み重なる不満や怒りをビジュアル化することで、私たちも彼女の感情を体験しているかのような感覚になる。仕事で疲れて帰った夜、食器を片付けずにテレビを見ている夫。小馬鹿にしたような夫の一言。そんなことの積み重ねが「もう無理かも」という気持ちへとつながっていく様子が痛いほど伝わってくる。
そんなある日、孝一の帯広への転勤が決まる。仕事を続けたい真理子にとって、それは大きな決断を迫られる出来事だった。母親や周囲から「夫について行くのが妻の役割」と言われ、真理子は迷いながらも退職を選ぶ。しかし新しい土地での生活は孤独で、これまで積み上げてきた仕事とやりがいを失った喪失感がのしかかる。次第に「自分の人生とは何なのか」という問いが彼女の中で大きくなっていく。
家庭も仕事も完璧にこなそうと頑張る真理子。夫への愛があるから我慢し、でも理解してもらえずに苦しくなる。そんな葛藤を見せる彼女に共感する人は少なくないはずだ。
文=ネゴト / fumi
