再婚して新しい幸せを手に入れたと思ったら、出産10日後に夫から家を閉め出された!? 不可解すぎる夫の行動に加担していた黒幕とは?【書評】

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公開日:2025/11/6

 相手の浮気や気持ちのすれ違いが原因で離婚に至った場合、多くの人は「何かしらの兆候があったはず」と考えがちだ。しかし、普段と変わらない態度や会話の中に異変を感じ取るのは案外難しいもの。後から振り返って「そういえば」と思い出す場合もあるが、その時点では気づけない人は多い。

産後10日でホームレス 浮気夫に家も息子も奪われました』(Sumi:著、あいか:原作/KADOKAWA)は、まさにそんな状況に直面した女性が、理不尽な現実の中で母親として強く生きようとする姿が描かれている。

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 主人公・翔子は、幼い娘を連れて再婚したばかり。優しい夫と3人で穏やかな日々を過ごしていた。やがて、夫との間に待望の子どもが誕生。出産にも立ち会ってくれた夫と幸せを噛み締める……はずだった。産後から10日経ち、夫の態度が突然豹変。娘と出かけた隙に家から閉め出され、はっきりした理由も告げられぬまま、「離婚だ」と一方的に突きつけられてしまう――。

 本作の見どころは、極限まで追い詰められた翔子が母親として、そしてひとりの女性として困難に立ち向かい、再生していく過程が丁寧に描かれている点だ。幸せな家庭が一瞬にして崩れ去ることの恐怖や、信じていた人に裏切られた悲しみは計り知れない。ましてや、翔子は一度目の結婚で失敗し、決して消えない心の傷を抱えている。また深く傷つき、すべてを失った今、もう一度立ち上がるには想像を絶する勇気と強さが必要だっただろう。

 けれど、彼女はただ絶望に沈むだけの女性ではなかった。愛息を取り戻すため、つらすぎる現実から目をそらさずに真実を追う中で、夫の策略に加担していた“黒幕”の存在が次第に明らかになっていく。この世で一番怖いのは人間だとよく言われるが、まさしくその通り。裏に潜む底知れぬ悪意を見て、背筋が凍りついてしまった。人の弱さと狡さを描いた物語として、じっくりと噛み締めたい作品である。

文=ネゴト / 糸野旬

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