順風満帆のキャリアウーマンが女性風俗にドハマりした理由とは? 現代社会で生まれた心の孤独が「癒やし」を「依存」に変えていく【書評】
公開日:2025/11/5

リモートワークの普及により希薄化した職場の人間関係。便利になったはずの社会で、孤独が静かに深く広がっている。誰にも弱音を吐けず、それでも強くあろうとする人ほど、心の奥に小さな空白を抱えているのかもしれない。『お金で愛は買えますか? 普通OLが女性風俗に沼って闇堕ちしました』(ベリー:原作、もちふわ:作画/KADOKAWA)は、キャリアウーマンの里香を主人公に描いたヒューマンドラマだ。
仕事では常に成果を求められ、周囲の期待に応えるために自分を律してきた里香。そんな日々の中で、ふとしたきっかけで女性用風俗の「デートコース」を目にする。軽い気持ちで予約したつもりが、セラピスト・KENの穏やかな笑顔と優しく寄り添ってくれる言葉に、次第に心を奪われていく。一時の癒やしを求めただけのはずが、気づけば彼の優しさが生きる支えとなり、やがて依存へと変わっていく。
KENは女性を癒やすプロだ。誰にでも優しく、相手の心の距離を測ることに長けている。その優しさが仕事であることを里香も理解している。それでも、彼の言葉の端々に本物の愛情を感じてしまう。恋と錯覚しながらも、その錯覚こそが彼女を救っている。そんな危うくも切ない心理描写が、読む者の胸を締めつける。
本作が描くのは単なる恋愛ではなく、社会的に自立して経済的にも満たされているはずの女性が、心の居場所を見失ってしまう現代社会の現実だ。「誰かに優しくされたい」「女として扱われたい」そんな願いは、弱さではなく誰もが抱く自然な感情だ。愛を買うという行為を、否定も肯定もせず、ただ真摯に見つめ直している点が本作の核心だ。
KENに惹かれていく里香の姿はSNSやオンライン社会の中で孤独を感じる私たち自身を映した鏡のようだ。つながっているのに、どこか満たされない時代。そんな今だからこそ、この物語が突きつける「癒やしと依存の境界線」というテーマが痛いほど心に響く。現代社会の光と影に触れた本作を読んだ後、あなたの心には何が残るだろうか。
