髙橋海人さんが選んだ一冊とは?「優しい気持ちになりたい時の一冊 読む度に心が満たされていきます」

あの人と本の話 and more

公開日:2025/11/20

※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2025年12月号からの転載です。

「いつもひとりで寂しい日々を過ごしていた犬のドッグが友達ロボットを購入し、彼と唯一無二の親友になる。そこには会話が一切なく、表情や行動だけでふたりの関係性が描かれるのですが、彼らが絆を深めていくのが手に取るようにわかって。気づけば、最後には号泣してました」

 髙橋さんの推薦本は『ロボット・ドリームズ』。昨年、アニメ化された映画を観て、すぐさま輸入盤の原作コミックを購入したのだという。

advertisement

「ドッグとロボットは、ほどなくして離れ離れになってしまうんです。ただ、短いながらも濃密な時間を過ごしていたからこそ、ドッグには幸せな思い出がたくさん残っていて、ふとした時に懐かしんで笑顔になったり、切なさが押し寄せてきたりする。そうした彼のさまざまな感情がこちら側にも真っ直ぐ伝わってきて、読む度に心が満たされていきます」

 別々の場所で各々の時間を過ごすふたり。再会できる日を夢見る彼らの純粋さも髙橋さんの胸を打った。

「最後にロボットにとっては胸が苦しくなるような選択を迫られるんです。それでもみんなが笑顔になるハッピーエンドが待っているんですよね。優しい気持ちになりたい時に何度も読み返す、そんな一冊です」

 間もなく公開する『君の顔では泣けない』。この映画もまた、大きな選択が物語の鍵となっている。

「高1の夏に体が入れ替わってしまった男女の、その後の15年間を丁寧に描いた作品です。親友や家族との関係性だけでなく、就職、恋愛など、誰の身にも起こる10代、20代の出来事を別の人間の体で経験していくふたり。斬新さのある物語だけに、演技面で悩むことも多かったです」

 髙橋さんが挑んだのは〈坂平陸〉として生きる水村まなみ役。「ふたりの人生を同時に背負っている感覚でした」と、その難しさを振り返る。

「まなみは、他人の体で生きている間の思い出は一体誰のものなのかと考えてしまう。だからこそ時間が経つにつれて、元の体に戻れることが本当に幸せかどうかで悩む。演じながら、僕も何が正解か、自分ならどうするか、答えを出せなかったです」

 また、今回の役を通し、「改めて、人は誰もがオンリーワンなんだと気づかされました」と言葉をつなげる。

「当たり前ですが、自分という人間はふたりとしていない。そんな意味でも、陸とまなみが選んだ未来を見届けてほしいです。本作を観て、自分自身を大切にする思いを、より強く抱いてくれたら嬉しいですね」

取材・文:倉田モトキ 写真:TOWA
ヘアメイク:浅津陽介 スタイリング:丹 ちひろ(YKP)

たかはし・かいと●1999年、神奈川県生まれ。2018年、King & PrinceのメンバーとしてCDデビュー。同年、『部活、好きじゃなきゃダメですか?』でドラマ初主演を果たす。近年の出演作にドラマ『DOPE 麻薬取締部特捜課』『わが家は楽し』『95』『だが、情熱はある』、映画『おーい、応為』など。

ロボット・ドリームズ
(サラ・バロン:著、杉田七重:翻訳/ポプラ社)2970円(税込)

とある街でひとり暮らしをしている犬のドッグは友達ロボットとの日々を満喫していた。しかし、海水で故障したロボットはそのまま浜辺で動けなくなり、さらにはビーチも封鎖され、ふたりは翌年の夏まで会えない状況に……。2023年公開のアニメ映画も話題となり、各国で映画賞を受賞。24年には日本公開された。待望の翻訳版コミックが登場。

映画『君の顔では泣けない
原作:君嶋彼方『君の顔では泣けない』(角川文庫/KADOKAWA刊)監督・脚本:坂下雄一郎 出演:芳根京子、髙橋海人、西川愛莉、武市尚士、中沢元紀、林 裕太ほか 製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ 11月14日より全国公開●高1の夏に体が入れ替わってしまった坂平陸と水村まなみ。いつか戻れると期待しながらも月日は流れ、それぞれの人生を歩んでいく。そして30歳の夏、陸はまなみから元に戻る可能性について聞かされる。
©2025「君の顔では泣けない」製作委員会

あわせて読みたい