「自信が持てない人、諦めている人の背中をそっと押してあげたいんです」【姫 インタビュー】
公開日:2025/11/24
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2025年12月号からの転載です。

自分のことを、特に人には知られたくないコンプレックスをオープンにするのは、怖い。でも、「弱さを開示すること」はときに、誰かの背中をやさしく押すことにつながる。SNSの世界でそんな奇跡のような体験をしたのが、インスタグラマーとして活躍する姫さんだ。彼女は20代の頃に重度のパニック障害と不安障害を患い、それが原因で、髪の毛の半分以上が白髪になってしまった。それを公表したところ、想像以上の反響が寄せられたという。
「最初に白髪のことについてカミングアウトしました。ただ、積極的にオープンにしたわけではなくて。それまではブリーチで誤魔化していたんですが、髪の毛が傷んでしまって、ブリーチすらできない状態になったんです。となると、もう地毛である白髪で生きるしかない。だから恐る恐る、自分のことを打ち明けてみました。どんなふうに見られるんだろう、と不安でしたね」
しかし、心配は杞憂だった。姫さんのもとには「素敵な髪色です」「歳を重ねて、白髪になることが怖くなくなりました」といったポジティブなメッセージばかりが集まった。
「20代の頃からずっと悩んできたことだったので、報われるような心持ちでした。当時は相当つらかったし、私の人生はもう終わりなんだ……とさえ思っていました。でも、そうではなかった。コンプレックスだった部分がみんなに受け入れてもらえて、ああ、白髪になったのも悪いことではなかったんだと思えました」
いまでは独自のファッションセンスを活かし、白髪を含めたトータルコーディネートで人気を集めるようになった。そんな姫さんが、自身の半生を綴ったのが『52歳、今ようやく人生が始まるの』だ。
「出版のお話をいただいた当初は、私なんかの本を誰が読むんだろうと思ったんです。でも、白髪や病気のことをカミングアウトしたときに、同じように悩んでいる人が大勢いることに気づいて。私がどうやってコンプレックスを乗り越えてきたのかを綴ることで、まだ悩みの渦中にいる人たちを励ますことができるかもしれない。だとしたら、本を書くことにも意味があるんじゃないか、と捉え直せました。完成した本は時々読み返しているんですが、そのたびに泣いてしまいます。でも、それは悲しいからじゃないんです。読み返すと『どんなことがあっても大丈夫だよ』と語りかけられている気がして、強くなれるから。私にとってこの本は、人生のお守りみたいな存在です」
その〝お守り〟を胸に、姫さんは前を向き、自分らしい人生を歩んでいくのだろう。大勢の人たちを勇気づけながら。
「これまでの経験を活かしながら、今後は他にはない独自のコーチングをやろうとしているところです。それから、同じような白髪で悩む人たちに向けて、白髪専用のかわいいカラーシャンプーも開発したい。やりたいことはたくさんあるんですが、いずれにしても、自信が持てない人、私なんて……と諦めている人たちの背中を押してあげたい。ネガティブさえも受け入れて、ほんの少しの勇気を持つことで、人生は大きく変わっていきますから。自分の嫌いなところも『意外とかわいいじゃん』と受け入れられる人が増えるように、私にできることをやっていきます」
取材・文:イガラシダイ
ひめ●元々モデルとして活動し、現在は白髪を活かした個性的なファッションで人気を集めるインフルエンサー。SNSの総フォロワー数は22万人超。日々のコーディネートの他、美容や夫婦の日常についても発信している。「年齢を重ねても、人生は何度だって輝ける」をモットーに、年齢にとらわれない豊かな生き方を実践中。

『52歳、今ようやく人生が始まるの』
(姫/KADOKAWA)1760円(税込)
何度も「消えてしまいたい」と思った姫さんが、SNSによって好転していった人生について語る。悲しみを力に変える、豊かな生き方が学べる一冊。ハイセンスなファッションに身を包んだ写真もたくさん収録している。
