悪徳宗教とマルチ商法にハマり、お金への執着がエスカレートしていく母親。娘たちの必死な説得を無視する彼女が辿る運命は?【書評】
公開日:2025/11/16

『長年家族だと思っていた母は知らない人でした 家族を破滅と崩壊へ導いた、母の信仰心』(えみこ:原作、ジジ&ピンチ:漫画/KADOKAWA)では、宗教が絡むマルチ商法によって破滅していく女性の姿が描かれる。
物語は実家へ戻ることになった主人公が、母のしている仕事と彼女の変貌ぶりを父から聞かされるところから始まる。主人公にとっての母は倹約家という印象で、「やさしかった」と発言する場面もある。しかし母は仕事のためと言いながら父の退職金2000万円を無断で使い、主人公の祖母に1000万円の借金をするようになっていた。
父は母の仕事はマルチ商法ではないかと疑うが、母がなぜ多額のお金を必要としているのかは謎だった。しかし調べてみると宗教関連の水晶や経典らしき本が見つかり、母が結婚前から宗教団体に入信していることが発覚。それを本人へ問い詰めるも逆ギレする状況だ。
母は作中で「仕事が生きがい」と言うが軌道に乗っているわけではなく、彼女の背後には大量に余った商品が頻繁に描写される。物語が進むにつれて母はお金の無心ばかりするようになり、マルチ商法で転落していく様子が生々しい。
そんな家族がいたら誰もが目を背けたくなるだろう。しかし娘である主人公とその妹は母からの電話に応じたり、対面で話し合いを試みたりする。本作は狂っていく母に焦点が当てられるが、娘ふたりの母に対する訴えが悲痛で、読者をより心苦しくさせる。
主人公と妹は「もしかしたら目を覚ましてくれるかもしれない」と淡い期待を持ちながら、涙を流して母に仕事を辞めるよう訴える。主人公に関しては、母が生活を立て直すための費用を用意するほどだ。しかし母の宗教とお金への執着は娘たちの思いを跳ね除け、彼女らに対する母の言動には思わず怒りの感情が湧いた。
悪徳な宗教が絡むマルチ商法によって変貌した母がどんな末路を辿るのか、ぜひその目で確かめてほしい。
