夫の不倫現場を目撃した妻。復讐を決意した彼女が選んだ方法は「推し」になること? ポジティブに進行していく新感覚の不倫復讐劇!【書評】
公開日:2025/11/19

サレ妻の話なのに読んでいて苦しくならない。そんな復讐劇を描いたのが『不倫相手の推しになって、夫から奪ってやります』(小日向ひまり:漫画、八星こはく:原作/KADOKAWA)だ。重くなりがちな「不倫もの」を、明るくテンポよく描いた新感覚の作品で、読後にはスカッとした爽快感が残る。
主人公の凜香は、同じ会社で働く同期の男性と結婚し、幸せな日々を送っていた。しかし、夫の帰りが遅くなり、スマホのパスコードが変わるなど、少しずつ違和感が募っていく。そしてある日、夫の不倫現場を目撃してしまう。相手は、自分とはまったく違うタイプの小柄で可愛らしい女性だった。
ショックで立ち直れなくなりそうな状況だが、凜香は違った。「だったら奪い返してやる」と決意し、驚くような復讐を思いつく。なんと、夫の不倫相手が夢中になっている「推し」の姿に自分を寄せて、その女性に近づくのだ。その大胆な作戦を後輩の望月がサポートし、ふたりの復讐劇が始まる。
面白いのは、復讐の描き方が重くないところだ。泣いたり怒鳴ったりするのではなく、ユーモアとテンポのいい掛け合いで物語が進む。時に恋愛ドラマのように、時にコメディのように展開していくため、読んでいても重い気持ちにならない。
さらに、凜香はただの被害者として描かれていない。傷つきながらも「泣いているだけじゃもったいない」と笑い、自分の幸せを自分の手で取り戻そうとする姿が印象的だ。その行動力と明るさに勇気と元気をもらえるだろう。
物語の終盤には思いもよらない展開が待っている。不倫相手にも変化が訪れ、最後はスカッとする結末へ。誰かを傷つけるためではなく、自分自身を取り戻すための復讐として描かれている点が、この作品のいちばんの魅力だ。笑いながら前に進む力をくれる、ポジティブ復讐劇である。
