妹は今日もハイテンションで踊ってます。天真爛漫な妹とダウナー系の姉が送る贈る、笑いと癒やしの日常コメディ【書評】
公開日:2025/12/3

『しまいずまい』(渡りに船/KADOKAWA)は、マンションの一室でともに暮らす仲良し姉妹のなにげない日常を描いたコミックだ。登場するのは、24歳社会人のアキと19歳大学生のことみ。特別なことは何ひとつ起こらない平凡な日々も、この姉妹にかかれば笑いに変わる。
仕事にげんなりしながら起床したアキがリビングのドアを開けると、早起きしたことみがなぜかテンション高く歌い踊っていたり、大学生にもなってぬいぐるみで遊んでいたり。そんな妹に呆れるアキだったが、気づけば一緒に楽しく遊んでしまうことも。性格も違えば、社会人と学生と立場も違うけれど、ふたりはなんだかんだで気が合う似たもの同士だ。
本作では、言いたいことを遠慮なく言い合いながらも、お互いを大切に思う気持ちがしっかり伝わる姉妹ならではの距離感と、テンポ抜群の掛け合いがコミカルに描かれている。言い合いをしてもすぐに仲直り、ツッコミとボケが止まらない――そんなふたりの自然体な関係がたまらなく心地よい。
また、アキとことみのやりとりには、お互いを思いやる優しさもしっかり感じられる。特に在宅勤務で孤独になりがちな社会人の姉・アキにとって、妹・ことみの天真爛漫な性格は大きな心の支えとなっている。仕事で疲れたり気分が沈んだりしても、ことみの明るいふるまいや無邪気な行動に触れるだけで、自然と笑顔が戻る。
仕事や人間関係で心身ともに疲れたときや、不安で気持ちが沈んでいるとき、そばに理解してくれる相手がいるかどうかで心の持ちようや回復の早さは大きく変わるものだ。それは、つらいときに話を聞いてもらったり、共感してもらったりするだけで安心感が生まれ、ストレスや孤独感が軽減されるからである。アキとことみの関係を通して、そんなふうに自然に支えてくれる存在のありがたさや尊さを丁寧に描く本作。家族や大切な人とのつながりの温かさを、ページをめくりながら感じてほしい。
