12歳の息子が急性骨髄性白血病と宣告された。難病と向き合い、闘う家族の物語がわたしたちに教えてくれること【書評】

マンガ

公開日:2025/11/22

明日、息子は空に還る 小児白血病と闘った家族の10年』(わさび/KADOKAWA)は、小児白血病と闘った息子と、最期まで彼を支え続けた家族の物語。

 12歳のカズマは、ある日突然「急性骨髄性白血病」と宣告された。その瞬間、家族の穏やかな日常は音を立てて崩れ去る。病気を理解しようと必死になって情報を集め、希望を探そうとする両親。そしてまだ幼い妹は何が起きているのか分からず、入院の付き添いで忙しい母に会えない寂しさを募らせるばかり。

advertisement

 入院したカズマは抗がん剤治療に臨むが、思うような効果は得られなかった。次の手段は骨髄移植だったが、家族の誰とも適合せず、ドナーを待つしかない状況となる。見えない未来に怯えながらも、家族はもう一度笑える日を信じて、長く苦しい闘病の日々と向き合い続ける。

 信じたくない気持ちと、何かの間違いであってほしいという願いが入り混じる中、先の見えない不安に心が揺れる日々。

 患者を励まし支える一方で、その家族もまた孤独や恐怖を抱え込んでしまい、感情の整理が追いつかないこともある。「先生、本当は怖くて怖くて仕方ないんです」と学校で打ち明け、子どもたちにだけは涙を見せまいとする母親の姿が胸を打つ。

 病気は誰にでも起こり得る。たとえ定期健診や予防を徹底していたとしても完全に防ぐことはできない。もし病気になってしまったときに大切なのは、つらさをひとりで抱え込まないことだ。家族や友人、医者へ不安や痛みを素直に伝えることで心の負担は相当軽くなるだろう。病と向き合うすべての人に読んでほしい作品だ。

文=ネゴト / 糸野旬

あわせて読みたい