「スパイ」の技術でビジネスを円滑に? 上司に意見を通す、うそを見抜く…相手の心を掌握するスパイ流コミュニケーション術【書評】

ビジネス

PR 公開日:2025/11/18

スパイに学ぶ「あざとい」会話術
スパイに学ぶ「あざとい」会話術(勝丸円覚/講談社)

 社会生活や仕事で欠かせない会話。うまく人と話すコツを知りたい人だけでなく、コミュニケーションのスキルで周りと差をつけたい人は、本書『スパイに学ぶ「あざとい」会話術』(勝丸円覚/講談社)で、スパイの力を借りてみてはいかがだろうか。

 著者は、元公安警察官の勝丸円覚氏。警視庁公安部外事課で外国のスパイを逮捕する「スパイハンター」を務めたほか、某国大使館で勤務国や他国の動向を探る任務にも従事し、現在は、セキュリティコンサルタントとして活動する人物だ。日本を熱狂させた連続ドラマ『VIVANT』の公安監修を務めたことでも知られている。

スパイから学べる会話術を4つのカテゴリーに分けて紹介

 国内外でスパイと接し、自身も他国での情報収集に携わってきた勝丸氏によると、スパイには、情報提供者(協力者)と信頼を築き、時にはコントロールするために、巧みな会話術や交渉術が求められる。そして、そんなスパイやスパイハンターに求められる技術は、一般社会でも応用が可能だという。本書は、そんな、スパイから学べる実用的な38の会話術を、相手を知るための「傾聴力」、相手の心に忍び込む「共感力」、相手の心を変える「感化力」、相手や状況をコントロールする「掌握力」の4つのカテゴリーに分けて紹介している。

 その内容は、相手に心を開かせるためのスタンスや事前調査、あいづちなどのコミュニケーションの基本から、上級テクニックまで幅広い。「相手の趣味や好きなことから入り込む」など、明日から実践できそうなノウハウも豊富だ。しかしその中でも興味深いのが、スパイならではの高度な会話術だ。たとえば、「小さなお願いを積み重ねる」は、小さな要求から徐々に大きな要求に広げていくことで、相手の警戒心を緩めながら相手の自発的なモチベーションを引き出し、目的を達成する方法だ。信頼を失い、誘導だと警戒されるリスクもあるが、成功すれば得られるものが大きいという。

実際の諜報の現場での会話の事例、使う際のコツも記載

「知らないふりをして相手に語らせる」「挑発で相手を喋らせる」「はったり(ブラフ)で情報を引き出す」などの会話術は、さらに高難易度だ。しかし本書では、それぞれのメリットやデメリット、実際の諜報の現場での会話の事例や、使う時のコツも記載しているため、スパイ映画好きやスリリングな会話を楽しみたい人は、一度、くれぐれも自己責任のもとで試してほしい。

「相手のうそや異変を見抜く」「うそをつかなければならないときの心得」などの、スパイにつきものの「うそ」に関する会話術も面白い。相手の態度や言葉に表れるうその兆候、うそを見抜くためのアプローチ方法や、どうしてもうそをつかなければいけない時のコツは、実践するかはともかく、知っていて損はないだろう。

 スパイならではのネタだけでなく、仕事や日常での具体的な課題を解決するヒントも多い。「怒っている相手のなだめ方」「相性の悪い相手、嫌な相手と上手に距離を取る」「上司に対して意見を通すコツ」など、目次に並ぶトピックの中から、今、自分が困っていることを見つけて参考にしてみてもいいだろう。スパイや公安の裏側が知りたい映画・ドラマ好きや、コミュニケーションスキルを上げたい人が、楽しみながら知的好奇心を満たせる1冊だ。

文=川辺美希

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