エスカレートしていく家庭内モラハラ、そして娘が通う水泳教室での不倫。最低夫から自分と娘を守るため、地獄の結婚生活に終止符を打つ【書評】
公開日:2025/11/25

モラハラされているのに、自分を責めてしまう場合がある。そんな日々が積み重なるうちに、少しずつ自己肯定感が削られていく。『娘の水泳教室で不倫してた夫を捨てるまで』(サレ妻マユコ/KADOKAWA)は、そんな痛ましい現実を描いたサレ妻の再生ストーリーだ。
主人公のマユコは、誰もが羨むほど優しくて素敵な彼・信介と結婚した。幸せな結婚生活を思い描いていたが、妊娠をきっかけに彼の態度は一変する。献立が気に入らないと無視を続け、少しでも反論すれば舌打ちをしたり罵倒したりする。外では人当たりが良いのに、家の中では支配的な態度に豹変するのだ。
さらに義母からも嫌味を言われて孤立した育児に。だがマユコは心をすり減らしながらも、夫の理不尽さに耐え、機嫌を窺う日々を送っていた。そんな中、娘の通う水泳教室で夫が不倫していたことが発覚。子どもの成長を見守る場所で裏切りを犯したという夫の行動に、マユコの悲しみと怒りは想像するに余りあるだろう。
夫婦間のモラハラの怖さは、日常に溶け込む支配にある。少しずつ本性を現していく夫に対して、気づけば自分を責め、相手を正当化してしまうようになる。本作は、ただの不倫告発や被害の告白では終わらない。娘のために、そして自分を取り戻すために、マユコが立ち上がる姿が描かれる。弱さを抱えながらも一歩を踏み出す彼女の姿に勇気をもらえるはずだ。
実は支配者だった彼への愛と恐怖の間でもがくマユコを通して、モラハラという見えない暴力の残酷さを突きつける。もしかしたら、気づかなかった家庭内の支配構造を知るきっかけになるかもしれない。
