引っ越したマンションは不倫の巣窟だった…閉ざされたコミュニティで繰り広げられる危険に絡み合った人間関係の行く末は?【書評】

マンガ

公開日:2025/11/23

 浮気や不倫という言葉を耳にしたとき、「自分は大丈夫」とどこか他人事のように感じている人は多いものだ。けれどそうした出来事は意外と身近なところに潜んでいることがあり、ともすると当事者になってしまう可能性は決してゼロではない。

 そんな日常に潜む危うさを描いた作品が、『不倫マンション 住人たちの乱れた秘密』(緒川琴衣:漫画、春野せり・テラーノベル:原作/KADOKAWA)だ。主人公・いろはは、夫・桔平の転勤で新しいマンションに引っ越してきた主婦。6歳の娘・莉緒にすぐ友だちができ、平穏な新生活が始まる――はずだった。しかし、いろはは、どこかよそよそしく、妙に探り合うような住人たちに違和感を覚える。互いの家庭事情を探るような言葉の応酬と、意味深な笑顔の裏に潜む緊張感。夫婦関係の話題になると場の空気が一変し、互いの生活に踏み込んだ質問が飛び交い、より不穏な空気が漂う。やがていろはは、このマンションの住人たちが抱えているとんでもない秘密の数々に気づいていく――。

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 本作の見どころは、マンションという閉鎖的なコミュニティ内で絡み合う人間関係の複雑さを描いている点だ。表向きは理想的な家庭を装っている住人たちだが、彼らの心の奥には常に嫉妬や孤独、承認欲求が渦巻いている。夫婦間にある倦怠感、満たされない欲求、ありふれた日常からの逃避願望――。住人たちが求めるのは愛なのか、それとも刺激なのか。

 表面的な笑顔の裏に隠された欲望、秘密、そして裏切り。ページをめくる手が止まらなくなるのは、そこに弱さや狡さと不安を抱える私たちの、後ろめたい部分が映し出されているからかもしれない。一筋縄ではいかない人間ドラマの結末は、ぜひあなた自身の目で確かめてほしい。

文=ネゴト / 糸野旬

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