転生×医療マンガ!? 転落医師が、右手に宿った特殊能力で“最強医師”への道を駆け上がる！ 痛快医療サクセスストーリー【書評】

「転生マンガ×医療!?」――意外な組み合わせに驚きながら読み進めれば、胸がスカッとした。こんなに痛快なマンガにはそうそう出会えない。転生マンガは無数に読んできたが、このマンガは別格だ。そう思わされたのが『ドクタークエスト 転落医師、転生して最強医師になる』（nifuni／MYRIAGON STUDIO：原作、苔島花石：コンテ、nifuni：漫画、森﨑洸貴：脚本/LINEマンガ）。ECCM（救急×集中治療）を舞台に繰り広げられる医療サクセスストーリーだ。

　主人公は、神堂薪人（マキト）。大病院の院長である父に憧れて医師となり、父の病院で働くことになった彼は、救急集中治療科の後期研修医となったある日、父を突然急性腎不全で亡くす。院長の息子であるマキトを疎む人間は少なくなく、父の死によってマキトの人生は一変。病院内での権力者・小沢総司にハメられて病院をクビになり、さらには、借金を背負って個人クリニックを開業するも、交通事故に遭って、外科医としての命とも言える右手に麻痺が残ってしまった。やがて借金取りに追い詰められ、ついには命を落とすことに。

　だが、目の前に浮かんだのは「▶CONTINUE」の文字。そして、「もう一度やり直したい」と願うマキトが目を覚ますと、そこは父親もまだ生きている12年前。なんと研修医時代の自分に回帰転生していた。おまけにマキトの右手には……。

　転生前のマキトの転落っぷりを目の当たりにしていたから、回帰転生を果たした後も、「どうか彼が悲惨な目に遭わないように」と祈るような思いで読み進めた。だが、どうやらそれは杞憂だったらしい。医師としての経験・記憶を保ったまま回帰転生したマキトは最強。研修医とは思えないほどの卓越した能力で、患者の命を次々と救っていくことになる。

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　しかし、困難がない訳ではない。人の命を救おうとするマキトの前にはたくさんの苦難が待ち構えている。たとえば、回帰転生後も病院内での権力者・小沢総司はマキトを陥れようとしているらしい。おまけに小沢はマキトの父親の健康診断の担当医。もしかしたら転生前に父親が死んだのは、小沢が病気の兆候をわざと見逃したことに原因があるのかもしれない。だが、多忙な父親に「今すぐ検査を受けてくれ」と頼んでも簡単には聞く耳を持たない。そんな状況の中でマキトは父親の命を救うことなどできるのだろうか。

……いや、このマンガを読み進めれば読み進めるほど、マキトならどんな状況でも打開できるに違いないと確信してしまう。マキトは絶対に命を諦めない。今度こそ「父さんや救えなかった人たちも救ってみせる」と意気込んでいる。千葉大学病院 救急科・集中治療部の医療監修がなされた、命を救う現場の描写は緊迫感抜群。患者の命を救うために全力を尽くすその姿はなんとカッコいいことか。小沢のような腐った医者の姿も描かれるが故に、マキトの姿は輝いてみえる。

　胸がスカッとするのは、とにかく勝ちかたが美しいからだ。ただひたすら目の前の命に向き合い続けるマキトは、金や権力ばかりを追う医師たちの体質にメスを入れていく。そして、正しさを突き詰めた先、たくさんの命を救っていく。ああ、世の中にマキトのような医師があふれてほしい。そうとまで思わされる彼の活躍を、この逆転劇を、ぜひともあなたも見届けてほしい。その痛快さに、気づけば、どんどん続きが気になってしまうに違いない。

文＝アサトーミナミ

『ドクタークエスト 転落医師、転生して最強医師になる』
（nifuni／MYRIAGON STUDIO：原作、苔島花石：コンテ、nifuni：漫画、森﨑洸貴：脚本/LINEマンガ）
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