デスマーチなゲーム制作現場を支えてきた神絵師を左遷!? 若手平社員コンビが不条理上司に闘いを挑む痛快お仕事漫画!【書評】
公開日:2025/12/10

質や量など個人レベルでは難しい仕事をして、その利益を社員に分配することが会社という組織の大きな役割のひとつだ。そんな会社活動を円滑に行うには、まとめ役となる「偉い人」が不可欠なのだが、その権力の使い方次第で、組織の健全さや社会的価値が大きく揺らぐことになる。『え、神絵師を追い出すんですか?』(宮城こはく:原作、乙津きみ子:漫画/KADOKAWA)は、自分の地位と利益のために権力を振りかざす偉い人々と、それに対抗する一般社員たちとの闘いを描いた物語である。
主人公・夜住彩は「神絵師」と呼ばれる売れっ子イラストレーターだが、とある理由からその正体を隠してデザイナーとして大手ゲーム制作会社に就職する。深夜残業、会社に泊まりは当たり前の現場を類稀な夜住の才能がなんとか支えていたが、ある日、部長の碇に仕事が遅い残業ばかりの迷惑社員と言われ、社内のはみ出し者が集められた部署に異動させられてしまう。現場の実情と夜住の才能を知っている同期の社員・真宵学は、この人事に異を唱えるも、入社2年目の若造ということで相手にされなかった。
ユーザーが喜んでくれるゲームを作るため、そして自分本位の人事を行った碇の鼻を明かすため、夜住と真宵はコンビを組んで碇と対決する道を選ぶ。不利な状況にあってもふたりは知恵を絞り、そしてこれまで権力の犠牲になった者たちの協力を得ながら困難を乗り越えていく姿には胸が熱くなるだろう。果たして企画コンペで勝利するのはどちらか?
会社に属しているどんな地位の人も本作を読んでほしい。若かりし頃の熱い気持ちを思い出させてくれるほか、働くこととは何か、出世とは何かということをあらためて考えさせてくれる作品だ。
文=西改
