なぜか隣人がチカチカと光を放ってくる…ただの迷惑行為と思いきや、そこには衝撃のメッセージが込められていた!【書評】
公開日:2025/11/28

『隣の家からのチカチカが止まらない話』(サル山ハハヲ/KADOKAWA)は、単なる隣人トラブルだと思われていたことが意外な方向へ展開する体験を描いた作品。意外性や予想外の結末が話題を呼び、SNSやブログで反響を呼んだ。
本作は、念願の一軒家を購入した立山一家の視点で描かれる。夫と娘とともに新居に越してきた主婦・立山春奈は、理想的な新生活に大満足。念願のマイホームでの暮らしは快適で、温かいご近所さんに囲まれ、何とも平穏な日々が始まった。しかし引っ越しからわずか1カ月後、異変が起きる。立山家は夜な夜な隣家の窓から放たれる、チカチカした謎の光に悩まされるようになった。
初めは気のせいと思っていた春奈だが、次第にエスカレートし、家族の日常を侵食していく。役所や警察に相談しても「実害がない」と門前払い。不動産会社の担当者も相手にしてくれず、夫すらも多忙を理由に取り合ってくれない。やむなくひとりで真相を追い始めた春奈は、隣人の放つ謎の光に隠された衝撃のメッセージに辿りつき――。
本作の見どころは、読者の予想を次々と裏切るどんでん返しだ。「隣人による嫌がらせ」という先入観から物語は始まるが、驚くべきことに真相は全く別のところにあった。誰が敵で、誰が味方なのか、最後まで分からない緊張感が読み手を引き込む。春奈が単なる迷惑行為だと思い込んでいた光に込められたメッセージの意味が明らかになった途端、それまでの出来事が全く違う意味になるのが面白い。
目に見えているものだけが真実とは限らないとよくいわれる通り、私たちは表面的な情報や第一印象だけで物事を判断してしまいがちだ。しかし安易な思い込みや決めつけは真実を見誤り、取り返しのつかない過ちを犯す危険をはらんでいる。そんなリスクを痛感させてくれる作品だ。
