受験直前は「ロボットになれ」?『ドラゴン桜』脚本監修の西岡壱誠が語る、算数や数学を学ぶ利点と、勉強のモチベーション維持方法【インタビュー】
公開日:2025/12/5
■数字の違和感に敏感になれるのも算数や数学の利点
――西岡さん自身も、日常生活で算数や数学の考え方が役立つと思う場面はありますか?
西岡:会社を経営しているので、自社の利益率や成長率を考えるときなどには役立っていますね。でも、財務の感覚は社会で働いているなら、誰にとっても無関係ではないと思うんです。
例えば、ある年に副業で50万円稼いで、翌年に55万円を稼いだとしたら「5万円増えた」と考えるか「1.1倍増えた」と考えるかで、その後の判断は変わってくるはずなんですよ。目の前で5万円増えたとなると大金に見えますけど、1.1倍では「利回りがよくない」とも捉えられますし、NISAのような投資も注目される時代では、資産を蓄える上でも大事な視点ですよね。
また、数字の違和感に敏感になれるのも、算数や数学を学ぶ利点です。僕も税理士さんから報告された帳簿上で「この月の売上げ、数字が足りなくないですか?」と指摘したときがあって、数字に強い人は自然とそうした感覚も持っていると思います。
――人生で損をしないためにも、大事な視点かと思います。本書は「暗算する力」「式を立てる力」「置き換える力」「俯瞰する力」「試行錯誤する力」の流れで「30のトレーニング」に挑めますが、おすすめの学び方はありますか?
西岡:シンプルに最初の「暗算」から取り組んでほしいですね。数字に強くなるためには避けられませんし、避けて通れない小数と分数の違いも「なぜ、0.125を1/8でも表すのか」と分かりやすく伝えましたので、基礎を学び直すだけでも数字への抵抗感は薄れると思います。算数や数学が得意という意識がある人も、クイズやパズルを解くような感覚で読んでほしいです。

■勉強が合格への近道。受験直前は「ロボットになれ」
――本書も制作された西岡さんは、高校生向けの教育事業にも力をそそいでいらっしゃいます。まもなく受験を控える生徒に向けて、アドバイスをいただければと思います。
西岡:基本が大事です。受験直前だからといって応用を頑張ろうとしても難しいですし、粘り強く勉強と向き合ってほしいですね。例えば、本書のテーマにある数学では、分からないと思っていても手を動かして計算してみると「なるほど」と何かしらひらめくんですよ。適当でも動いていれば何かが見えてきますし、手を動かすのがイコール「考えること」だと伝えたいです。
――いわゆる受験直前の時期に、満足に問題を解けないと焦りも生まれそうですが。勉強のモチベーションを維持する秘けつもありますか?
西岡:生徒には「ロボットになれ」と伝えているんですよ。過去問を解いていても「上手くいかない」とか、色々と悩みは聞くんですが、解決策を突き詰めると結局「勉強すること」に行き着くんです。受験に限っては、悩みがいくつあっても答えは「勉強する」に尽きますし、今がしんどくても何よりもの近道なので、ロボットのように勉強へ没頭するのが一番だと思います。その合間で、息抜きとして『数字に強くなる30のトレーニング』もパラパラとめくってもらえるなら、うれしいですね。

取材・文=カネコシュウヘイ 写真=川口宗道
