井口裕香エッセイ連載「ヒップ・ステップ・ジャンプ!」/エピソード2:食事

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公開日:2025/11/28

 というわけで、今回は「何を隠そう、当時の私の体型は……」の続きのお話です。(まだ前回記事を読んでない方はこちらから読んでくださいね!)

 あの頃の私は今よりずっとふっくらしていて。ある日、現場で女性の先輩に「もしかして……おめでとう?」って言われたことがあったんです。「いやいやいや、ちがいます!」って全力で否定したけど、内心けっこうショックで(笑)。その瞬間、「あ、これは本気で体づくりしなきゃ」とスイッチが入りました。

 ちょうどその少し後に決まったのが、写真集『MORE MORE MORE』(KADOKAWA)の撮影。そこで「ちょっと頑張ってくださいね」と言われて、私の本気のボディメイク期間が始まりました。

 とにかく締め切り(撮影日)までに理想の体に近づきたくて、パーソナルトレーナーさんの指導を受けながら、まず見直したのが「食事」でした。

 今振り返ると、本当に大変だった!

 まずはお米。期限が迫っていたこともあって、言われたのは「夜は抜いて、昼も50グラムだけ」。さらに、根菜もダメ。大好きなさつまいもまで「糖質のかたまりだから控えて」と言われて、もう泣きそうでした。

 でも、さつまいも解禁! になったときの喜びといったらもう、世界が輝いて見えましたね。うん。ふるさと納税で冷凍の焼き芋を大量に取り寄せて、冷凍庫にぎっしり詰めてました。「今日のおやつに焼き芋が食べられる!って思うだけで、一日頑張れるくらいのご褒美だったんです。今食べたら普通に美味しいくらいなんですけど(笑)、当時の感動は今でも忘れられません。

 食事管理でいちばん大変だったのは、何を食べても必ず写真を撮って送ること。それまではついキッチンで立ったまま食べちゃうことも多かったんです。でもそれをすると、「何を食べたのか自分の目に入らないからダメ」と指摘されて。わざわざお皿に盛り付けて、写真を撮って送るよう徹底しました。

 最初は本当に面倒くさかったけど、「私はこれを食べた」と意識することが、食べ過ぎ防止になるんですよね。そのおかげで、自分の食生活を冷静に見つめ直す習慣がつきました。

 メニューはとにかくシンプル。ブロッコリー、ネギ、鶏肉、魚。味つけもほとんどせず、素材そのまま。外食や現場のお弁当では食べられるものがほとんどなくて、「どうしよう……」って頭を抱えたこともありました。

 お菓子も我慢。唯一の楽しみは、大好きなグミ「シゲキックス」を一粒だけ。どうしてもこれだけは食べさせてください! とお願いして、その一粒を噛みしめる瞬間が、本当に生きる喜びでした(笑)。

 でも、徹底した分だけ、体は驚くほど変わりました。朝はスッキリ起きられるし、頭もクリア。五感が研ぎ澄まされて、味覚も敏感になったんです。「食べるものが体を作る」という、当たり前だけど忘れがちなことを、体感として理解できたのは大きな収穫でした。

 もちろん、これは一生続けられるものじゃありません。だからこそ”短期集中の特別な時期”と割り切ってやり切れたんだと思います。ダイエットを頑張ったあとのリバウンドが怖い人も多いと思うけど、私の場合は「こうすれば体がこう変わる」という実感を得られたので、むしろその後の生活に活かせるヒントをもらえました。

 たとえば「ちゃんとお皿に盛って食べる」とか「ながら食べをしない」とか、ちょっとした習慣だけでも全然違う。今では白米も根菜も食べています。でも、「これは自分に必要かな?」と意識しながら食べられるようになりました。

 思い返すと、あの時期は本当に大変だったけど、「食べることと体の関係」を本当の意味で理解できた、かけがえのない時間でした。あの頃の自分に、「よく頑張ったね! えらいぞ!」って言ってあげたいです。

<第3回に続く>

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