午年の今こそ始めたい!三日坊主でもハマる“乗馬”の世界【書評】
公開日:2026/1/1

疾走する競争馬、映画や時代劇で登場人物が颯爽と馬に乗るのを見て、「馬に乗ってみたい」と思った経験がある人も多いだろう。しかし同時に、「乗馬に挑戦するのはハードルが高い」と感じる人もいるのではないだろうか。
『馬に乗らずにいられない! 続かない私、乗馬が趣味になりました』(小村ことみ/KADOKAWA)は、どんな趣味も三日坊主だった著者が、「趣味は乗馬です!」と言えるようになるまでのコミックエッセイだ。乗馬の楽しさや馬の魅力に夢中になっていく過程が、その時々の心情と共に生き生きと描かれている。
乗馬の大きな魅力のひとつは、“生き物と一緒に行うスポーツ”であるという点だろう。馬の気分や性格に左右される難しさもある一方で、馬との触れ合いを通じて様々な体験ができる楽しみもある。
本作の中でも印象深いのは、馬の気持ちが分からず、技術不足に落ち込んでいた著者が、馬に励まされるエピソードだ。おやつをもらっていた馬が、著者を心配してそっと顔を寄せるシーンには、思わず胸が熱くなった。馬の賢さや感情の豊かさに、気づけば読者も馬の魅力の虜になってしまうだろう。
加えて、著者がそれぞれの馬の特徴をこまやかに描き分けているのも本作の魅力のひとつだ。本作には個性豊かな馬たちが数多く登場し、その中には、指導員の号令をわざと聞かないあまのじゃくな馬や、少しの音でもびっくりしてしまうビビりな馬など、その性格はまさに千差万別だ。それぞれの馬の顔立ちや骨格の違い、耳の角度から読み取れる感情、表情の変化を丁寧に捉えられていることからも、著者の馬への愛情が伝わってくる。
著者の乗馬への温かな想いがひしひしと感じられるコミックエッセイだ。そして、それと同時に、著者が馬と過ごした日々の記録でもある。読めばきっと、あなたも馬と触れ合ってみたくなるだろう。本を閉じたあと、すぐにでも「近くで乗馬ができる場所」と検索したくなるに違いない。
