好きな人に連絡できない…! 勇気が出ない妹に、姉からの迷言とは? うまくいかなくても「ま、いっか」と受け入れ、前を向かせてくれるコミックエッセイ【書評】
公開日:2026/1/11

家族っていろいろあるけど、やっぱり愛おしい。『小林一家は今日も「ま、いっか!」』(小林潤奈/主婦の友社)は、そんな気持ちにさせてくれる漫画です。
本書は、作者の小林潤奈さんが心温まる家族のエピソードをまとめた一冊。無口だけど家族が大好きな昭和の“漢”、お父さん。面白くて頼り甲斐のあるお母さん。美人なのにどこか変なお姉さん。とにかく明るい家族にツッコむ作者、潤奈さんのギャグセンスも最高なんです!


ユニークな表現が多く、何度も大声で笑いました。自分の声の大きさに驚いたほどです。ただ、本作は面白いだけでは終わりません。多くの気づきがあるんです。
読みながらパチンと心の迷いが解けたような気がしたのは、作者の潤奈さんとお姉さんが登場するエピソード。「アンモニア色の片思い」というお話です。好きな人になかなか連絡できない潤奈さん。思わず口にしたのは、「ちびるわ!」という赤裸々な思いでした。
小林姉妹は仲が良く、お互いに理解しあい、支えあう関係。「ちびる」とは、そんなふたりだからこそ出た独特の表現ですが、驚いたのは「みーんなちびってるの!」と潤奈さんに伝えたお姉さんの言葉でした。


恋愛に限らず、壁にぶつかると「自分には無理かも」と自信を失うことが誰しもあると思います。実際どうなのかはわかりません。ですが、できない理由を自分のせいにするより、みんな同じように悩んでいると考えたほうが、どれだけ前を向けることか。それに、スタート地点がみんな同じなら、最初から諦めることはないし、時には勝負に出る覚悟も必要。ポジティブに考えたほうが得るものは大きいかもしれない…という、ある種の“気軽さ”も心に生まれました。
当たり前なことかもしれませんが、それに気づけないほど心が硬くなっている時もありますよね。そんな時こそ、本作のユニークな表現、等身大で端的な言葉、読む人を全力で楽しませようとする明るい絵が、心をやわらかくほぐしてくれます。
そして、最後まで読み終えて思うのは、「みんなちびってる」のエピソードの続きにもあるように、潤奈さんが頑張れたのは、何があろうと受け止めてくれる家族がいたからだろうということです。「失敗してもいいから」と伴走しながら送り出し、うまくいかなくても「よく頑張った」と抱きしめ、「ま、いっか」と隣で一緒に前を向いてくれる家族。
本作の後半に描かれた潤奈さんの初恋エピソードには、潤奈さんが、過去に傷ついた自分を自分で抱きしめる場面があります。その姿に透けて見えるのは、これから何があっても大丈夫だろうと思える一本の強い軸でした。これを自己肯定感というのでしょうか。漫画に描かれている通り、お姉さんをはじめとする温かい家族に見守られ、教訓を得ながら成長してきた潤奈さん。家族っていつまでも一緒にいられるものではないと思いますが、盤石な家族の愛が潤奈さんを包み込んでいることが伝わりました。
良いことも悪いこともあるけれど、小林家の人たちは誰に対してもピュアで優しく、いつも全力。読む側もまた、まっすぐに生きる小林家の人たちに勇気づけられ、“明けない夜はないだろう”とハッピーマインドになれます。迷った時には“こうするといいかも”と小林家の人たちがヒントを与えてくれました。ただ面白いだけでは終わらない本作が、前を向いて生きていくためのお守りになりそうです。
文=吉田あき
