累計60万部! 年の差×身分差ラブストーリー『大正學生愛妻家』の生誕秘話とこれから――【粥川すずインタビュー】
PR 公開日:2025/12/30
■歳を重ねた自分だからこそ描ける恋愛があるかも
――粥川さんの過去作には恋愛要素が強い作品はあまりなかったと思うのですが、今回恋愛がメインのストーリーに挑戦したのはなぜでしょう。
粥川:自分が読んできた作品を振り返ると、恋愛中心のストーリーではなくても、恋愛が絡んだエピソードでキャラクターに惹かれたり好きになったりしていた気がするんです。だから、読んでくださった人がそんな気持ちになってくれる作品に挑戦してみたいなと。
――恋愛もの初挑戦作とは思えない胸キュン度合いです!
粥川:ありがとうございます。私は40代でマンガ家デビューしたので、若い人のような視点で恋愛を描くのは難しいなと思っていたのですが、むしろこの年齢だからこその視点での「キュン」を描いたら、自分にしか描けないものが描けるかもしれないとも思ったんです。
――40代でデビューされるまで、マンガ作品を投稿されていなかったのでしょうか?
粥川:ずっと憧れはありましたが、誰にも言えなくて……。原稿をちゃんと描いたこともありませんでした。ネーム、というか落書きを描いては、恥ずかしくて年に一度焼いていて(笑)。マンガ家になりたいと言いながら何もしていない人の典型のような感じだったのですが、他の漫画作品のファンアートをネット上で公開したら嬉しいコメントをいただけて。その体験に背中を押されたところがありますね。それで40歳を過ぎてから「やってみよう」と行動し始めました。
――そこからちばてつや賞受賞(第76回ちばてつや賞一般部門入選)に繋がるんですね。読者としてはどんな作品を読んでいたのでしょうか。
粥川:うーん、かなりいろいろ読んでいましたね。家族みんながマンガを読む家庭だったので、字が読めるようになったくらいから、お父さんの『ビッグコミック』を読んだり、お兄ちゃんの『週刊少年ジャンプ』を読んだり……。手あたり次第に読んでいましたね。
■主役ふたりのキャラクター、最初に決まったのは勇吾の瞳
――ふきはどのようにして生まれたキャラクターなのでしょうか。
粥川:とにかく、読者に好感を持たれる人であってほしいと思って描いているキャラクターです。実はもともと前作に登場させようと思っていたキャラで、下地はあったので、そこから「節約家にしよう」とか「ねえやだからお姉さん属性があるだろうな」といった性格を加えていきました。あと私は、男の子キャラは目がシュっとしている子が好きなので、女の子は逆に瞳が丸っこくてたぬき顔の、可愛い感じの子にしようと思って。

――なるほど。ということは、勇吾は粥川さんの好みを反映しているのですね。彼はどんなふうに生まれたキャラクターですか?
粥川:目が切れ長であることと、私が大好きな旧制高校の学生であること、イケメンであることは最初から決めていました。でも性格がすごく難しくて。連載が始まってからも悩みながら描いていました。

――どういったところが難しかったのでしょうか?
粥川:ピンポイントで語るのが難しいのですが、5話あたりまではずっと悩んでいましたね。担当編集さんから「勇吾はこういうことはしないのでは?」といったアドバイスを何度ももらったりしながら悩みつつ描いていました。難しいんですよ、 あの人(笑)。特に序盤はいろいろな感情を隠し持っているので。ふきのことがすごく好きだけど、その感情を表には出さない。そのあたりの整合性を取るのが難しかったです。描いていくにつれてわかってきた部分もありますが、まだ完全に掴み切れていないかもしれません。
――本作にはふきと勇吾以外にも魅力的なキャラクターがたくさん出てきます。粥川さんのお気に入りのキャラクターを教えてください。
粥川:桃木くんという勇吾の友達がお気に入りです。彼にはこれからも活躍してほしいですし、他の学校関連キャラクターも新しく出していけたらと思っています。あと、菊さんなど、ふきの女中仲間とのお話も描きたいですね。
