最愛の兄は悪魔なのか? 愛と疑念の対立の先に衝撃の展開が待ち受けるサイコスリラー『ピアス 刺心』主演・ツァオ・ヨウニン【インタビュー】

ダ・ヴィンチ 今月号のコンテンツから

公開日:2025/12/26

※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年1月号からの転載です。

『ピアス 刺心』主演・ツァオ・ヨウニン、母親からサイコパスとして警戒される、グレーな長男を妙演。

「ジーハンは非常に賢い人。観察力も高く自信にみち、すべてを自分でコントロールしてゆく彼は僕とは正反対の人間なので、演じ甲斐を覚えました。もうひとつ魅力を感じたのは脚本です。なぜ母親は息子を見放してしまったのか。なぜ彼の弟は最終的にあのような決断を下すのか? そんな疑問を抱き、好奇心をそそられたわけです。正解はまだわかりませんが、ジーハンについてはシンプルな答えに辿り着きました。彼は他者から理解されたい、認められたいという想いが強かったのだと思います。ジーハンを演じるのはチャレンジでしたが、常に緊張状態や酸欠状態のような感覚をキープして現場に臨んでいました」

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 フェンシングも猛特訓。

「スポーツは得意で、身体能力や体力にも自信があったんです。でも練習を続ければ続けるほど、元チャンピオンにみえるか、観客を納得させられるか不安になって。9カ月間、まずは基本動作を叩き込むことに集中しました。劇中でも腰を落とす動作をしていますが、あれで本物か否か見抜かれるわけです。人物ごとに攻撃スタイルも異なるので、そのキャラづけも大変でした。ただフェンシング練習や全体リハーサルを通して、ジージエ役のリウ・シウフーと多くの時間を共有したことは、兄弟役の関係性を高めるうえでも良かったですね。彼とは波長が合い、いつしか“暗黙の了解”もできました」

 失われた時間を取り戻しつつあった兄弟。だがボタンのかけ違いが悪夢のごとき事件を招く。

「映画公開時のイベントで多くの観客と対話する機会に恵まれましたが、興味深いことに受け取り方は様々。サスペンススリラーだったりサイコホラーだったり、家族のドラマという声もありました。ただ僕自身は人間の心の奥、人間性を探求する映画ではないかと思っています」

取材・文:柴田メグミ

ツァオ・ヨウニン●1994年4月24日生まれ、台北市出身。小学生のときに野球を始め、2012年にAAA世界野球選手権のチャイニーズタイペイ代表に選出されるなど活躍。14年、『KANO 1931 海の向こうの甲子園』のエースピッチャー役で俳優デビュー。台北映画祭の助演男優賞を受賞。その他の出演作に、『スリングショット』『恋するマフィア娘』など。

ピアス 刺心
監督:ネリシア・ロウ
出演:リウ・シウフー、ツァオ・ヨウニン
2024年シンガポール、台湾、ポーランド 106分
配給:インターフィルム
12月5日より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開中
●フェンシングの対戦相手を殺した罪で、少年刑務所に服役していたジーハンが、弟のジージエと7年ぶりに再会。「事故だ」という兄の言葉を信じた弟は、兄を警戒する母の目を盗み、兄からフェンシングの指導を受け、兄弟の時間を取り戻してゆくが……。

ダ・ヴィンチ 2026年1月号 [雑誌]

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