「HSPだからこの仕事できません」そう言って周りに押し付ける新入社員に一同困惑…現代コミュニケーションの課題を突き付けるコミックエッセイ【書評】
公開日:2026/1/19

日本では「繊細さん」などと訳される「HSP」。「ハイリー・センシティブ・パーソン」の頭文字を取った呼び名で、病気ではないが、先天的に感受性が強く敏感な気質を持っているために、周りに気を使いすぎてしまう、周りと比べたときに自己嫌悪に陥ってしまうなど、生きづらさを感じてしまう性質のことだ。『新人は自称HSP』(はむら芥/KADOKAWA)は、「自分はHSP」と公言する新入社員に周りが振り回される物語である。
入社5年目の加藤は、新入社員ふたりの教育係を任される。その新人のひとり、高瀬に対する第一印象は「明るくて素直そうな子」であったが、任せた仕事の粗さが目に余り、その理由をそれとなく本人に探ってみる。すると高瀬は、生まれながら気を遣いすぎる気質のため、加藤が忙しそうにしていたから質問できなかったと説明。それを聞いた加藤は新人だからと納得しつつ、業務ひとつひとつに意味があることを丁寧に優しく伝えると、高瀬の表情が一変して逆ギレしたような態度を取り、さらに「自分はHSPだから配慮してほしい」と訴えるのだった。
実は高瀬は自分がラクしたいがためにHSPという言葉を利用しているのだが、加藤や周りの人間は、高瀬の言い分を認め、どこか腑に落ちないながらも高瀬のワガママを受け入れざるをえなくなってしまう――。
自分からHSPを笠に着た言い方をしてしまっている高瀬は問題外だと思うが、実際に組織を円滑に動かすためには、どのようなコミュニケーションが皆のストレスにならないかをしっかりと話し合い、個人個人の特性を理解し合うことがベストだろう。とはいえハラスメントという言葉が一般化した現代においては、安易に動いてしまうとリスクになることも忘れてはならない。本作は、社会に身を置いている私たち全員が、明確な答えを見出せないかもしれないが、それでも心がけておくべきことをあらためて認識させてくれる作品である。
文=西改
