大ヒット映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』が待望の舞台化!約20年来の仲である二人が演じる鬼太郎の父と水木は、お互いハマり役?【鈴木拡樹×村井良大 インタビュー】
公開日:2025/12/28

2023年に水木しげるの生誕100周年記念作品として公開された、アニメ映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』。第47回日本アカデミー賞で優秀アニメーション作品賞を受賞するなど話題を集めた本作の舞台化が決定、2026年1月から東京・大阪・佐賀で上演される。今回は鬼太郎の父を演じる鈴木拡樹と、水木を演じる村井良大の対談が実現。本作は2007年のドラマ『風魔の小次郎』から深い縁があるふたりの共演についても注目が集まっている。役と作品への向き合い方から、お互いの変わったところ、変わっていないところまで。ふたりが演じることへの熱意が伝わる対談をお伝えする。
長く愛される『ゲゲゲの鬼太郎』に携わる覚悟

――『ゲゲゲの鬼太郎』はかなり歴史の長い作品ですよね。
鈴木拡樹(以下、鈴木):そうですよね。今回の舞台をやるにあたって少し調べたのですが、初期の作品から考えると、相当な年数愛されている作品ですよね。
村井良大(以下、村井):僕も『墓場鬼太郎』の漫画の1巻を読んだのよ。そしたらかなり映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』と近いんだよね、終わりに墓場も出てくるし。だから「これは鬼太郎ファンの方も喜ぶ作品だな」と感じましたね。その期待を裏切らないものにしなくてはいけないとも思いました。
――映画もご覧になりましたか?
村井:もちろんです。戦争の傷跡があると同時に日本が復興していく、ある意味一番ギラギラしていた時代が舞台で、「立ち上がらなきゃいけない」みたいな勢いがすごく描かれているなと感じました。だからこそ非常に人間の醜さと美しさが同時に描かれているなと。
鈴木:そうそう、原点というか『墓場鬼太郎』に近いもので。心にすごく刺さるし、苦い思いを残してくれるような映画だったよね。それに「なんて舞台に向いているお話なんだろう」と思ったんですよ。
村井:確かに僕もすごく演劇っぽい匂いがするなと思った。セリフ回しとか。
鈴木:そうそう、テンポ感がとても舞台向きなんだと思う。一緒に盃を交わすところだったり、タバコを吸うところだったり、しっかり間を使えるシーンが結構あって。ふたりが無言でいても関係性が見える瞬間があるというか、第三者の視点からふたりが相棒っぽく見える空気感を伝えるために時間が使えるなと思ったんです。
村井:そこは生だからこそ伝えられる部分もあるしね。もちろんアニメ映画だからこそ伝えられるものがある一方で、実際に役者がその場で演じることによってわかるニュアンスもあると思っているので。そこは僕らが役者として作っていければと思いますね。
――普段映画を観るときも「これは舞台に近いな」と思ったりするんですか?
鈴木:僕は結構思っちゃう方ではありますね。「これはすぐには舞台として想像できないな」と思うこともあります。ただそれでも実際に出演しますし、難しいと思ったからこそ「じゃあどうしたらいいかな」と反骨心が湧いてきて楽しくなったりもします。
村井:そうだね、「これ舞台っぽくできるな」という時と「これ舞台は無理だろう。でもやるんだったらどうやるんだろう?」という時と両方あるよね。
鈴木:ドラマ向きというか、毎週区切りがあって次を楽しみにしてほしい作品ってあるじゃないですか。それだと本当は舞台としては難しいんだけど、でも試してみる価値はあるとは思うんです。そういった作品に挑戦するのもまたやりがいですね。
村井:「ジョジョの奇妙な冒険」の第五部とかね、難しいよね。
鈴木:舞台も三部構成になっちゃうからね(笑)。となるとお客さんも1を観ていただいたあとに、2と3までその時の熱を持ったままでいてもらわないといけない。お客さん側にも覚悟が必要という難しさもありますね。
“不思議な奴”と“野心家”……それぞれの役の捉え方

――まだ稽古は始まっていないとのことですが(※取材時点)、映画や過去の「ゲゲゲの鬼太郎」シリーズはどの程度参考にされていますか?
鈴木:原作や原案がある作品ということは、ある程度の縛りがある作品だといつも思っているんです。原作ファンの方の頭の中にはすでにイメージがあって、そこに必ず寄せなければいけないわけではないけど、少し寄せた方がお客さんにとっては入りやすい世界観になるよなと。今回の場合は映画のファンの方がいらっしゃって、さらに映画を観た方も高確率で舞台を観に来てくださると思うんですよね。となると頭の中に映画を観たときのイメージがすでにある。そのイメージが僕の役作りのひとつの材料になっていますね。僕自身、映画を面白いと感じたので、できるだけ近い形で実写化できたらなと思っています。
村井:映画について監督のインタビューを拝見したのですが、「実写的に演じてほしい」みたいなことをおっしゃっていて。それが僕らからするとありがたいなと思いました。僕らは2次元のものを3次元に膨らませて生身でやるわけだから、「実写的であってほしい」という言葉はこの作品に生々しさ、リアルさを通す意味ですごくありがたい言葉ですね。昭和の雰囲気を出す面白味もありますし、もちろんキャラクターの魅力もありますし。「この作品を舞台で作ることは間違いではないんだろうな」とすでに確信しています。
――現段階でそれぞれの役をどう演じていきたいと考えていますか?
鈴木:鬼太郎の父は目的がはっきりとしているので、そこに向かっていく感じですね。それを明かすまでの間は「なんか不思議な奴だな」と思ってもらいたいです。作品の空気感がガラっと真剣なモードに切り替わるときに、ちゃんと鬼太郎の父もそのモードに入っていくので。物語の謎が解き明かされていく過程で、鬼太郎の父も人物像が見えてくるのかと思います。最初はいかに不思議な人と思ってもらえるかですね。
村井:水木のキーワードは反骨精神ですね。「上にのし上がってやる」「俺は下にいるような人間じゃない」という気持ちが強い。本当は弱いからこそ血気盛んになるのが水木の魅力だと思います。だから演じる上でも野心を大切にしていきたいですね。
それに水木は、人を信頼していないんですよ。「全ては自分のため」みたいな感覚を持っているところが非常に汚いし、人間っぽいなと思うんです。それはそうやって生きていくしか術がなかったからというのも理由のひとつで。今作には妖怪はあまり出てこないんですけど、人間の方がよっぽど妖怪だというくらい、醜い部分を持った人間が登場しますよね。そこは『ゲゲゲの鬼太郎』自体のテーマでもあると思うんです。人を信用していない水木がゲゲ郎(=鬼太郎の父)と出会ってどう変化していくのかも観てほしいです。
――現時点で「難しそうだな」と感じるところはありますか?
村井:水木の場合はセリフやモノローグが結構大量になりそうな気がしています。映画に関するインタビューを読むと、監督から「昭和な感じが出る喋り方にしてください」という指示があったと書いてあったんです。「ハキハキ喋って早口で」みたいなことをアフレコの時に提案されたらしくて。確かにそうすると昭和の血気盛んな「とにかく自分が一番になる!」という強さが語気に表れるなと思ったし、舞台っぽくもあるなと。そこは役作り、作品作りにおいて覚えておきたいところですね。
鈴木:僕の場合はアイテムの使い方かな。組紐とか下駄が攻撃手段なので、どう舞台で見せていけるかがひとつのポイントになると思います。何か発明できないかなと……。
村井:下駄版ナイキエアマックスとか発売してほしいよね。
鈴木:(笑)いいね!
村井:舞台の上で下駄を履くと、すごく足に負担がかかるんですよ。怪我にも繋がるし。
鈴木:負担はその通り。だけどやっぱり下駄の音で「あ、きた」と感じてもらいたいんですよね。
村井:歌舞伎での下駄を使った芝居を見てみたら? やっぱり使い方が素晴らしいから。あとは下駄の間に黒いクッションを入れるとか……。すみません、下駄トーク長いですよね(笑)。
鈴木:(笑)。
