発達障害を持つ子ほど中学受験すべき!?「うちの子には無理かも」と思った親に読んでほしい実録コミックエッセイ【書評】
公開日:2026/1/10

この本はただの受験ガイドではない。『発達障害っ子の中学受験』(モンズースー:著、小川大介(中学受験指導30年):監修、橋本圭司(医学博士):監修/KADOKAWA)は、特性を持つ子どもたちとその家族が、中学進学という選択肢と向き合い、悩み、選び、実際に挑戦していくプロセスを、取材をベースに紡いだ実録コミックエッセイである。
本作の特徴は、4組の異なる特性を持つ子どもたちとその家族の事例を並行して描く構成にある。クラスになじめない、勉強が続かない、体力がない……。さまざまな悩みを抱えながら、受験を決意するまでの葛藤、塾選びや勉強法の工夫、学校選び、受験当日の緊張と合否の結果、そして進学後に感じた現実──。各家庭の独立したストーリーを見せながら、「子どもらしさをどう育むか」という子どもを持つ親にとって共通のテーマにスポットを当てる。
そして、本書が最も新しいと感じたのは、「特性のある子は、中学受験がプラスに働くこともある」とはっきり描いている点だ。学校選びの過程では、偏差値や進学実績だけでなく、「子ども自身が安心して過ごせる環境」を重視する姿勢が丁寧に描かれている。少人数制、自分に合う校風、特性への理解が深い先生といった、私立中学らしい幅広い選択肢を、自分たちの目や耳、足を使い、じっくりと見つけていく。
こうした「学びの居場所」の発見こそ、一般的な受験マンガにはない視点であり、中学受験を学力で競うステージではなく、子どもが生きやすい「居場所」を獲得する手段と再定義するのだ。もちろん、実用的な情報が得られるのもうれしいところ。発達障害の診断や薬の使用といったデリケートな選択に家族が向き合っていく場面が、感情の揺れや葛藤を含めて正直に描かれる。
読み進めていくうちに、発達特性のあるなしに関わらず、すべての子どもたちのために本来重要視されるべきことは何かを突きつけられる。子育て観や教育観を再考する契機になる一冊だ。
文=時任邪武郎
