松嶋菜々子さんが選んだ一冊とは?「やなせさんの言葉には、苦しくても頑張ろうという温かい強さがあります」

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公開日:2026/1/27

※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年2月号からの転載です。

 松嶋さんは、NHK連続テレビ小説『あんぱん』出演にあたり、高知県の香美市立やなせたかし記念館を訪れ、長い時間を過ごした。そこで記念に購入したのが、やなせさんが自費出版した2冊、『愛・LOVE・優』と『優・LOVE・美』だった。

「モノクロの絵が、かわいらしくてロマンチックで。どの詩も何度も読み込んで、その度に色々な思いを抱きます。来年で25年になる結婚生活の長い月日を思ったり、子育てを振り返ったり……」

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 特に共感を覚えた詩は、『愛・LOVE・優』の中の一編。「(前略)たおれそうでも進むのだ 凍えそうでもがまんする それが生きるということだから」。

「私も、人生って修行だなと思うんです。その修行を乗り越えた先に見えるものが、たくさんあるはずだから」

 松嶋さんは、やなせさん自身の人生にも思いを馳せる。

「戦争体験や弟さんを亡くされたこと、マンガ家として晩成だった苦労。やなせさんの人生は、決して順風満帆ではなかったと想像します。だからこそ、やなせさんの言葉は、ただ楽しいばかりではなく、苦しくても頑張ろうという温かい強さがあるのではないでしょうか」

 松嶋さんは今、主演ドラマ『おコメの女―国税局資料調査課・雑国室―』の撮影中だ。「つねに違うタイプの役に挑戦することにこだわってきた」と言う。本作で演じるのは、マルサを凌ぐエリート集団・資料調査課の敏腕国税調査官にして、新部署・複雑国税事案処理室(ザッコク)を創設した米田正子だ。

「役作りをとても楽しんでいます。正子はすごくはっきりした性格で、ポロッと悪態をついたり本音を漏らしたり。彼女の持つ緊張と緩和のバランスが面白いです」

 正子のシンプルな容姿のイメージに合わせ、バッサリとショートカットにした。

「実はショートが好きなので、張り切ってカットしました(笑)」

 正子には、「一生懸命頑張っている人が報われる世界であってほしい」という強い信念がある。

「私の中にも、彼女の正義感と通ずるものがあります。それは、社会をつくる一員としてのモラルでもあるのだと思います。正子が調査する事案は、多少、実在の事件をモチーフにしています。そんな所にも注目しながら、ザッコクの爽快な活躍を楽しんでいただけたら嬉しいです」

取材・文:松井美緒 写真:TOWA

まつしま・ななこ●1973年、神奈川県生まれ。『リング』(98年)、『ホワイトアウト』(00年)で、第22、24回日本アカデミー賞優秀主演女優賞受賞。近年の主な出演作に、連続テレビ小説『あんぱん』、大河ドラマ『どうする家康』、「アナザーストーリーズ 運命の分岐点」(NHK BS)にナビゲーターで出演中。

『愛・LOVE・優』
(やなせたかし/やなせスタジオ) 1320円(税込)

*香美市立やなせたかし記念館のアンパンマンミュージアムショップで販売
かつて絵の方向に悩んでいた頃、3カ月で500枚描いたという男女の「デュエット」の姿。その中の50点に、やなせ自身が1編ずつ詩を付けて自費出版したのが本書。モノクロの美しい絵、愛と人生を語った言葉から、メルヘンの世界が立ち上がる。併せて『優・LOVE・美』も発売されている。

木曜ドラマ『おコメの女―国税局資料調査課・雑国室―
脚本:『g.O.A.T』 演出:田村直己ほか
出演:松嶋菜々子、佐野勇斗、長濱ねる、千葉雄大/高橋克実/勝村政信、戸次重幸、大地真央、寺尾 聰
1月8日(木)スタート 毎週木曜夜9:00〜9:54 *初回6分拡大SP テレビ朝日系24局
●脱税者を震え上がらせる税務調査の最後の砦、東京国税局・資料調査課(通称・コメ)。敏腕調査官・米田正子は、コメも手を出せない厄介な事案を扱う「複雑国税事案処理室(通称・ザッコク)」を新設。個性派のメンバーを招集し、悪徳脱税者を取り締まる。
©テレビ朝日

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