コーヒーの進化は戦争の歴史とともにあった。兵士たちの休息のひとときを支えたインスタントコーヒー/コーヒーでめぐる世界史①

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公開日:2026/1/15

コーヒーでめぐる世界史』(増田ユリヤ/ポプラ社)第1回【全7回】

コーヒーの進化は、実は戦争の歴史とも深く結びついていた――。元々はイスラム世界の秘薬だったコーヒーは、オスマン帝国の侵攻によってヨーロッパにもたらされ、社交の場「カフェ」を生んだ。美味しいコーヒーを淹れられることが出世につながった時代もあり、さらには、フランス革命はカフェから始まったという説まで。歴史の転換点をたどると、そこには必ずコーヒーの香りが漂っている。身近なコーヒーをきっかけに、歴史上のさまざまな出来事が一本の線として立ち上がる! 入門書にも、学びなおしにもぴったりな一冊『コーヒーでめぐる世界史』をお楽しみください!

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『コーヒーでめぐる世界史』
『コーヒーでめぐる世界史』(増田ユリヤ/ポプラ社)

コーヒーの進化 インスタントコーヒーの開発

 様々なコーヒーメーカー(器具)がありますが、もっとも手軽に淹れられるのは、いわゆるインスタントコーヒーです。粉末のコーヒーにお湯を注ぐだけで飲むことができます。

 インスタントコーヒーの製法には、濃縮したコーヒーに熱風を当てて乾燥させるスプレードライと、コーヒー液を凍結させて乾燥し顆粒状にするフリーズドライがあります。今では技術が進んで、インスタントコーヒーも美味しく飲めるようになりましたが、開発された当初はあまり美味しくないと人気が今ひとつでした。

 インスタントコーヒーが最初に開発されたのは、18世紀後半のイギリスだと言われています。同じころ、フランスのアルフォンス・アレーが軍隊向けに甘いインスタントコーヒーの特許を初めて取得しました。

 19世紀になるとアメリカでも最初の製品が開発されました。折しも、南北戦争の時期で、兵士たちには固形のインスタントコーヒーが配られました。

 本格的なインスタントコーヒーの開発に成功したのは、19世紀末、日本人の科学者カトウ・サルトリでした。カトウは、インスタントの紅茶の開発をしようとしていましたが、それが粉末のインスタントコーヒー開発に結び付いたのです。カトウ・サルトリのインスタントコーヒーは、1901年にアメリカで開催されたパン・アメリカン博覧会に出品されました。

 その後、アメリカでは大量にインスタントコーヒーが生産されました。手掛けたのは、ベルギーからの移民ジョージ・コンスタント・ルイス・ワシントンで、特許を取得しました。インスタントコーヒーは米軍の兵士たちが戦地で飲むようになりました。第一次世界大戦時には、ワシントンの名前にちなんで「カップ・オブ・ジョージ」と兵士たちから呼ばれたとか。

 第二次世界大戦が始まる直前の1938年4月、ネスレ社がインスタントコーヒー「ネスカフェ」の販売を開始しました。このころ、コーヒー生産量世界一のブラジルでは、余ったコーヒーの保管方法が課題となっていました。その解決策として生まれたのがインスタントコーヒーだったのです。第二次世界大戦が始まると、兵士たちが束の間の休息のひとときにコーヒーを飲み、心身を整えたといいます。コーヒーの進化は、戦争の歴史とも深いかかわりがあったのです。

<第2回に続く>

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