「コーヒーの代わりにビールを飲むべし」国王が宣言を出すほど高まったコーヒー人気/コーヒーでめぐる世界史④
公開日:2026/1/18
『コーヒーでめぐる世界史』(増田ユリヤ/ポプラ社)第4回【全7回】
コーヒーの進化は、実は戦争の歴史とも深く結びついていた――。元々はイスラム世界の秘薬だったコーヒーは、オスマン帝国の侵攻によってヨーロッパにもたらされ、社交の場「カフェ」を生んだ。美味しいコーヒーを淹れられることが出世につながった時代もあり、さらには、フランス革命はカフェから始まったという説まで。歴史の転換点をたどると、そこには必ずコーヒーの香りが漂っている。身近なコーヒーをきっかけに、歴史上のさまざまな出来事が一本の線として立ち上がる! 入門書にも、学びなおしにもぴったりな一冊『コーヒーでめぐる世界史』をお楽しみください!

「コーヒーの代わりにビールを飲むべし」
一方でコーヒーを手に入れることも飲むこともできなくなってしまった一般の市民や貧困層の人々は、自分たちもコーヒーを味わいたいと不満を訴えます。そして、自分たちが飲めるコーヒーを提供してほしいと大王に要求したのです。
しかし、その回答は
「コーヒーには近づかぬがよし。いずれにせよ、身体によからずして、不妊症の原因なり」
というものでした。コーヒーが飲まれるようになった理由のひとつは、気分をスッキリさせ、胃もたれを軽減し消化を助けるなど身体にいいという点で、当時は(チョコレートと同様に)薬局で手に入れるものでした。そのため、コーヒーを非難する際には、医師たちの手を借りることが多く、特に女性が飲むと「妊娠の妨げになる」という台詞は常套手段でした。
フリードリヒ大王は、さらに1777年9月13 日に「コーヒーの代わりにビールを飲むべし」といった内容の宣言まで出しました。
予の臣民飲みたるコーヒー、その量増えたるによりて膨大な貨幣、国より出て行くことを看過しえぬことなり。臣民すべてコーヒーを飲用す。出来うれば、それを防がねばならぬ。予の臣民、ビールを飲むべし。先王、ビールにて成育せられ、その先祖代々もしかり。コーヒーを飲用せる兵士、辛苦に耐えられるや。またも戦起こりしとき、敵兵に打ち勝てようとは思わず。
『ALL ABOUT COFFE』TBSブリタニカなど
「コーヒーでは兵士たちは戦に耐えられない。ビールを飲むべし」という宣言をわざわざ国王が出すのですから、裏をかえせば、それほどコーヒーの存在は否定しがたいものになっていたのでしょう。
国王の宣言が出されたあと、しばらくの間はビールが名誉ある地位に復帰し、コーヒーはぜいたく品となりました。しかし兵士たちにとっては士気を高めて戦にのぞむためにもコーヒーは欠かせず、現実には禁止しようにもできなかったのです。
<第5回に続く>
