コーヒーが戦争の結末を左右した!? 第一次世界大戦の最中、コーヒー不足が兵士の士気に与えた影響/コーヒーでめぐる世界史⑦
公開日:2026/1/21
『コーヒーでめぐる世界史』(増田ユリヤ/ポプラ社)第7回【全7回】
コーヒーの進化は、実は戦争の歴史とも深く結びついていた――。元々はイスラム世界の秘薬だったコーヒーは、オスマン帝国の侵攻によってヨーロッパにもたらされ、社交の場「カフェ」を生んだ。美味しいコーヒーを淹れられることが出世につながった時代もあり、さらには、フランス革命はカフェから始まったという説まで。歴史の転換点をたどると、そこには必ずコーヒーの香りが漂っている。身近なコーヒーをきっかけに、歴史上のさまざまな出来事が一本の線として立ち上がる! 入門書にも、学びなおしにもぴったりな一冊『コーヒーでめぐる世界史』をお楽しみください!

戦争終結のかげにコーヒーあり!?
第一次世界大戦も膠着状況が続き、ドイツは劣勢を強いられていました。大戦末期には、地上戦での苦戦を打破するために無制限潜水艦作戦を宣言しました(1917年2月)。指定水路以外を航行する船をすべて無警告で撃沈するというこの作戦は、イギリスの海上封鎖に対して潜水艦で通商を断つことが目的でした。これより前に、イギリスの客船がドイツの潜水艦に撃沈され(1915年)、アメリカ人乗客100人以上が犠牲になったことがありました。これまでアメリカは戦争に不参加の姿勢をとっていましたが、ドイツの作戦を知るとただちに断交し、宣戦布告しました。イギリスはじめ連合国側についたアメリカから大量の物資が投入されたことにより、戦局は一気に連合国に有利に傾いたのです。
※ちなみに、反ドイツ感情が高まったアメリカでは、ハンバーガーを「リバティー・サンドイッチ」と言い換えたほどでした。
敗戦目前となったドイツは、イギリス艦隊に一矢報いようと全艦隊に出撃を命じました。ところが、ドイツ北部キール軍港の水兵たちがこれに反抗し、反乱を起こしたのです。第一次世界大戦の主要な戦いは陸上戦だったので、長期戦とはいえ海軍の水兵たちはなす術もなく、暇を持て余すような状態でした。とはいえ物資の不足で食事内容も悪く、それでも士気を鼓舞させ続けねばならないのに肝心のコーヒーもない。士官のような上級レベルの兵士でも船の磁石を盗んで売ったお金でコーヒーを買うほどの状況だったのです。11月3日に起こったキール軍港の水兵たちの反乱はたちまちドイツ全土に広がり、わずか1週間でドイツ帝国(帝政)は崩壊。ドイツは休戦協定に署名しました。第一次世界大戦の終結です。翌年(1919年)、ドイツ共和国(共和政)の誕生にいたるまでの一連の流れを「ドイツ革命」と呼んでいます。
戦争をどう終わらせるか、終わらせるのがいかに難しいことかということは、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルとガザ(パレスチナ自治区)の問題を見ていても明らかです。コーヒーが戦争終結を導いた、というと言いすぎかもしれませんが、コーヒーがいかに兵士たちにとって、戦争を継続するために重要な存在だったのかということは言うまでもありません。

